大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

バディ(男女問わず)

アトリエ乾電池の充実。

劇団東京乾電池『牛山ホテル』観る。作・岸田國士、演出・柄本明。 どえらいものを観た。緞帳におおきく「仏領印度支那のある港 九月の末 雨期に入らうとする前」とさいしょのト書が縫いつけてある。リーフレットにはこれまたおおきく岸田國士の言葉が印刷さ…

「君、これは音楽だよ。日常ではないんだ。音楽の中に定価なんて日常用品が入りこんでいいものだろうか」  『ガラスの少尉』

唐十郎『唐版 滝の白糸 他二篇』。収められているのは表題作と、「由比正雪」「ガラスの少尉」。 銀メガネ あたしは異化の旅を恐れ気もなく志していたのかもしれない。袋小路に追いつめた者達が、その風情を異口同音にののしった時、あたしは異化のほうきに…

どんなにものぐさになってもこれだけは映画館で

『嘘八百 なにわ夢の陣』観る。監督、武正晴。脚本は今井雅子と足立紳。 お正月映画として定着しつつある三作目、すでに関係は構築できているので物語がぐんぐんうごく。 冒頭は、麿赤兒の紙芝居。こんなところから嬉しい。そこで語られる太閤秀吉のお宝にあ…

ひとつの場所の行間、余白。

『ショウ・マスト・ゴー・オン』。初演は1991年。脚本・演出、三谷幸喜。 代演がつづき、公演中止の日もでた令和版。配信も一度は中止になってからの、追加公演と、配信。 ワン・シチュエーションのコメディ。舞台となるのは「舞台の現場」。といって舞台上…

現場仕事と恋物語

『大怪獣のあとしまつ』観る。 雨音ユキノ(土屋太鳳)が元カレの帯刀アラタ(山田涼介)をいまも想っている。冒頭、同窓会のばめんで恋愛映画であることが示されて、わなないた。 脚本、監督は三木聡。ふざけ散らかしているようでいて、まじめな愛が発露す…

ジョエル・コーエンの『マクベス』。

どこへ逃げたら? 何も悪いことをした覚えはない。いいえ、この世に生きているのだ、ここでは、悪いことをして、かえって賞(ほ)められ、よいことをして、危ない目にあい、ばか呼ばわりもされかねない、そうだとすれば、悪いことをした覚えはないなどと、所…

地に足のついたストーリーテリング

オクイシュージ脚本、監督『王様になれ』(2019)。原案は山中さわお。the pillows 30周年記念映画。 若いときに賞こそ獲ったもののなかなか目がでない写真家志望の神津祐介(岡山天音)、27歳。叔父(オクイシュージ)のラーメン屋で働いている。 祐介が出…

「これより千六百年の休憩に入ります」

作・しりあがり寿、演出・天野天街。芸術監督に流山児祥。『ヒ me 呼』観る。 器のおおきい流山児祥と、器のおおきいしりあがり寿と、器のおおきい天野天街と。想像以上にファンタジーで、リアルで、古代で、現代だった。 物語のはじまりは現代の温泉場。そ…

「物理学者でありながら、罪に染まらず」

フリードリヒ・デュレンマット原作『物理学者たち』(ワタナベエンターテインメント Diverse Theater)観る。上演時間2時間10分。 舞台は「桜の園」という名の、いまは精神病患者の施設となったサナトリウム。 自称ニュートン、自称アインシュタイン、殺害、…

排除する思春期

『プリンシパル〜恋する私はヒロインですか?〜』(2018)。原作・いくえみ綾。監督・篠原哲雄。脚本は持地佑季子。 若き日におとずれる好意の変遷。2時間の映画だからエピソードは省略される。あいてをいつ好きになり、どこで好きでなくなるか。そこにあま…

マヒ×ヒロ

『散歩する侵略者』(2017)の衝撃は高杉真宙だった。浮世ばなれした美少年。 長澤まさみと松田龍平が演じる、壊れつつあった夫婦の愛の物語だが、あんがい高杉真宙と長谷川博己のドラマでもあった。 ジャーナリストの桜井(長谷川博己)は宇宙人を名のる天…

言葉遊びする生きものたちの可愛さ

矢川澄子訳、金子國義絵。ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』。 さいしょに夢中になったのは河出文庫(高橋康也・高橋迪訳)で。ジョン・テニエルによる挿画、人間が皆グロテスクに描かれていたのも好かった。 そこからさまざまな版や研究本へと手が伸…

「このときを待ってたんだ。スロットじゃなにも生まれない」

マリヤッタ・クレンニエミ原作(絵・マイヤ・カルマ)の児童小説『オンネリとアンネリのおうち』(2014)。監督はサーラ・カンテル。 大家族のなかでさびしいオンネリ(アーヴァ・メリカント)と、離婚家庭にあってさびしいアンネリ(リリャ・レフト)。ふた…

「心に余裕があるうちは、意味のないことをしていたいんです。きっと今しかできないから」

テレビドラマ『夢中さ、きみに。』。和山やまの原作はフラットで、真顔の陰キャたち。ドライに科白していくほうの青春だから、ドラマ化には不安もあった。が、愚直といえるほど原作に忠実な台本や、高橋文哉と坂東龍汰のみごとな演技(「うしろの二階堂」)…

「悲しみは、にんげんの自由をうばいます。関節炎よりも、もっと」

「脇道に反れるのも、手品もなし。薬物もなしです」 1906年を舞台にした『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』(2018)。20世紀初頭のコスチュームプレイということもあってか、画や演技に保守的なところがある。現在は観光スポットのウィ…

ジュリーとゼリー

韓国映画『クワイエット・ファミリー』のリメイク、『カタクリ家の幸福』(2002)。監督、三池崇史。作品内容が暴力的でもあるけれど、撮りかたもまた乱暴で、しかし手堅い。 三池映画は出来が良くないときもままある。それでいて、キャスティングはつねに魅…

一九七九年の名作劇場

TOKYO MX で『赤毛のアン』がはじまった。アニメ『映像研には手を出すな!』や志村けんとパンくんの残影のなか視聴する。想像力と友情をあつかう。何周目のアンだろうか。とにかく泣く。おもいだしただけでも泣く。 初回は「マシュウ・カスバート驚く」と「…

アレクサンドリア、世界の結び目。

「ナショナル・シアター・ライブ」の『アントニーとクレオパトラ』(2018)、二人の死が語られるラストを冒頭にもってきたので、おどろいた。そういういじりかたを、予想していなかった。 『アントニーとクレオパトラ』が書かれたのは四代悲劇のあと、比較的…

「うしろ弁天まえ不動」

『吉祥寺寄席』行く。第55回。 登場したのは春風亭一猿、春風亭三朝、ゲストに栗林祐輔(能管。笛方森田流)。仲入あって八光亭春輔。 春風亭一猿、いまは前座だが5月に二ツ目昇進の由。演ったのは「半分垢」。 この噺はおもしろい。娯楽のすくない時代とい…

生首。森がうごくこと

ナショナル・シアター・ライブ『マクベス』観る。冒頭に制作者の解説映像あり。 もともとの舞台は11世紀。「超自然的な力を信じた時代」である。設定はそこから近未来へと変わる。 現代のイギリスがかかえる問題をかんがえると欧州連合、多民族、他宗教、経…

「『骨董品』になったら、また店においで」

中井貴一と佐々木蔵之介がならぶ『嘘八百』。包容力と胡散臭さをもつ二人。大阪で、骨董品をめぐるコンゲーム。 出演者が皆胡散臭さをまとっている。近藤正臣、芦屋小雁、木下ほうか、坂田利夫……。その辺りでじゅうぶんにおどろけるが、桂雀々まででてくる。…

(この二人は5年間…ちゃんと“師弟”だったんだなぁ…)

穂積『僕のジョバンニ 3 (3) (フラワーコミックスアルファ)』。 5年間。それがどのようなかたちになるかが天才と凡人の差ではあるのかもしれない。鉄雄の5年間は、端から見れば《空白》である。 鉄雄は腕だめしにとちいさな大会にエントリーするが、それを聞…

背中の描写、多い。

折り合いなんてつけたら 鉄雄は その瞬間に チェリストとして死ぬ 穂積『僕のジョバンニ 2 (フラワーコミックスアルファ)』。小学6年生の鉄雄はチェロを弾いていた。その音をたよりに、海難事故から生還できた郁未(いくみ)。郁未は鉄雄からチェロを習うが…

《チェロよ叫べ》

天才と、凡人のことがえがかれているよと聞いて、読めばすぐにそのちがいがわからなくなるけど、とにかくどちらも孤独である。 孤独と孤独が触れあったところに物語が生まれた。それは共同体的な教訓ではない。掟ではないのだ。 穂積『僕のジョバンニ 1 (フ…

「おれの父親がもっとマシな人間だったら……」「いまのあなたはいないわよ。あなたって、学校や町の誰とも違っている。それはお父さんのおかげだわ」

じつはいま、「なにかが起こっている」…… 『モンスタートラック』(2016)、油井から未知の水生生物が飛びだし、2体は捕獲したものの、のこる1体はどこに? きっかけはこのようなかたちで、採掘する企業が「追う者」として物語ははじまる。高校生の主人公(…

「何かすごいことが起こってあたしの日常を吹き飛ばしてくれないかなと そんな風に思っていたんです」「すごいこと? お前 霊感少女なんだろ なら日常はすごいことばかりなんじゃないか?」

『BOX~箱の中に何かいる~(1) (モーニング KC)』。諸星大二郎のアンテナにいま引っかかっているものを、ひとつの箱のなかに入れて物語に仕立てあげる。短編でもなく、連作でもない不可逆的なホラーコメディ。全3巻。 登場人物の光二と惠がBL! といって読みす…

〈門番を雇ってしまったので門を作ることにした〉  寺山修司

モンストコラボで『七つの大罪』。全然知らないがバンに一目惚れして課金、ゲットする。 かるいチェックのつもりでアニメやマンガの『七つの大罪』に触れたら、おもしろくってビックリした。テキパキと大胆な筋運びだけでなく、ガッツリ恋愛をえがいている。…

「ハチミツ アワふいてる」「ナマだからね」

1990年代以降の萩尾望都にハマッたので、ヒトやモノがさまざまな音を立てるなかを生き延びたり優しさで呑んだりしている社会性と非日常の描写愛しく、その方向でポーの一族されると快感をおぼえる。 アランが、岩橋玄樹みたい。現代の匂い。それでいて(それ…

「この家で正直者なのは俺だけだぁ」

ディズニーの『カンペキ・ボーイ』(2014)。白人と黒人のおんなの子が主演で、シンデレラストーリー、ファミリー・ロマンス。 ディズニー・チャンネル・オリジナル・ムービーは恋(非日常)と事件(非日常)と日常のバランスが良く、なにかが添え物になった…

「墓場より、もっと酷いところから逃げ出してきたんです」「そこは?」「継母の手のひら。あいつは僕の尻を撲った! 手のひらで撲った! 力一杯撲った!」

2011年の『身毒丸』、大竹しのぶと矢野聖人。 先ず脚本の寺山修司と岸田理生が愛しくて。愛する用意が出来てしまっている。演出は蜷川幸雄。 身毒が、継母にズボンを下ろされ尻叩かれる。身毒が、行水する。そういうナマの艶めかしさもあり、仮面や血のり、…