大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

バディ(男×男)

「…いつからそういうこと言うようなヤツになった?」

イシノアヤらしからぬ表紙の『アイ・ドント・クライ (上) 【電子限定おまけ+アマゾン限定特典付き】 (バーズコミックス ルチルコレクション)』。たおやかな、男子アイドル然とした顔。ほかの人物たちとは描きかたが異なる。それで華がある。 アイドルも、バ…

「なかちゃんはさー なんで映画同好会入ったの?」「……ウチの大学LGBTサークルあるの知ってる?(……)会員募集の張り紙のノリが……合わなくてさ〜」

新井煮干し子『もらってください (EDGE COMIX)』。マンガとして、自立している。ムダがない。登場人物けっこう会話してるのに、時間の省略きちんとしていて、動きがあり、喜怒哀楽もすごい。 モテることとあんまり縁なく過ごしてきた希介。女の子にとてもモ…

ド変態がすべてを呑む。

清潔な絵でがっつりエロい。そういうリアルもある。 碗島子『せまい。 (バンブーコミックス Qpaコレクション)』。売れっ子漫才師を目指す「せまい。」の二人、ヨイと塩。ネタ合わせは公園でするけれど、かならず見に来るあやしいおとこ。 ヨイは芸人の強心臓…

「男はチンコ揉まれりゃ硬くなるに決まってんだろ」

トリメ『五臓六腑の恋 (バンブーコミックス moment)』。深夜から始発前まで営業する食堂の店主(若い)と売れっ子ホストの物語。 アクロバティックな着想とか、急展開というのはない。初コミックス。マンガの技術は平均以上。 食堂店主はゲイで借金抱えてい…

(この二人は5年間…ちゃんと“師弟”だったんだなぁ…)

穂積『僕のジョバンニ 3 (3) (フラワーコミックスアルファ)』。 5年間。それがどのようなかたちになるかが天才と凡人の差ではあるのかもしれない。鉄雄の5年間は、端から見れば《空白》である。 鉄雄は腕だめしにとちいさな大会にエントリーするが、それを聞…

背中の描写、多い。

折り合いなんてつけたら 鉄雄は その瞬間に チェリストとして死ぬ 穂積『僕のジョバンニ 2 (フラワーコミックスアルファ)』。小学6年生の鉄雄はチェロを弾いていた。その音をたよりに、海難事故から生還できた郁未(いくみ)。郁未は鉄雄からチェロを習うが…

《チェロよ叫べ》

天才と、凡人のことがえがかれているよと聞いて、読めばすぐにそのちがいがわからなくなるけど、とにかくどちらも孤独である。 孤独と孤独が触れあったところに物語が生まれた。それは共同体的な教訓ではない。掟ではないのだ。 穂積『僕のジョバンニ 1 (フ…

しあわせのかたち

紗久楽さわ『百と卍 2 (on BLUEコミックス)』。物語を欠いた回が多いのに、読ませる。かるいネタのえらびかたが上手い。 こちらの知らないこと、それでいて調べたり、試したりしたくなるようなことを入れてくる。 固まってしまった現実のまえに置かれる未知…

「女の着物は きれいだなァ…」

漫画版『しゃばけ』アンソロジーで知った紗久楽さわ。BL『百と卍 (onBLUEコミックス)』、しっかり江戸の風俗で、楽しい。 同性愛にあこがれて、衆道として文化的にみとめられていたのが江戸時代、だからテーマにえらびましたというのじゃない。紗久楽さわが…

「きみに会えてよかった。」

こうしてまた徐々に時間をかけて、俺はもとの堕落した生活にもどっていった。 マロ「好きすぎてやばいから結婚するんすよね?」 蝶子「マロはコドモだねえ!」 『おっさんずラブ』、最終話。 脚本家・徳尾浩司がBL脳じゃないから書けたところ、いっぱい。上…

どの短編にも初期衝動

2011年にかわかみじゅんこ名義で出版された『いたいけざかり (Feelコミックス オンブルー)』は、もとをたどれば西目丸時代のコミックス(2004年。光彩書房)で、雑誌に掲載されたのはおもに1990年代。 それは当然1980年代から連なるもので、なんとなく想起す…

「いきなりお弁当なんて、ちょっと、重たくないかなって……心配だったんだけど」「ああ……重いです」

牧春版『おっさんずラブ』がどのようなラストを迎えるのか気が気でなく、2016年のオムニバス『年の瀬 変愛ドラマ』「第3夜 おっさんずラブ」観る。 この試運転があったからこそブラッシュアップできたのだと得心。1年とすこしのあいだにドラマのトレンドもず…

武川「春田がいま、カミングアウトしました……!!」

『おっさんずラブ』エピソード6「息子さんを僕にください!」。 年上女性・蝶子にゾッコンのマロ(金子大地)。声のトーンがちがうというか、控え目に言って上ずっている。いい演技。 黒澤武蔵(吉田鋼太郎)は「二番目の男でいいです」と言いだすし。 〈ブ…

マ「ジュニアとなにがあった? しんだはずのかれが目のまえに現れたからって、そんなにかんがえこむような貴方じゃない。以前ジュニアとのあいだになにかあったんだろ? だからそんなに…」  バ「過ぎたことだ」

「やっぱり! ジュニアは綺麗な子だったっけね。女みたいにいつもルージュを引いて」とマライヒ。「僕より愛してた?」 劇場アニメ『パタリロ! スターダスト計画』(1983)。 スラップスティック、矢継早のギャグ、ジャズ、シリアスへの茶化し。 パタリロは…

牧凌太「世間はいつだってうるさいです」

『おっさんズラブ』、武川を演じる眞島秀和がきっちり“第三の男”だ。嫉妬心の有無だろうか。 「好き」という感情を押したり引いたりするだけでは恋愛ドラマとして単調になる。烈しさはもちろんだけど、性格や感情の歪(いびつ)なところもだしていける舞台に…

BL寄り青春コメディ(しかし、同性愛傾向のない友情なんてあるのだろうか?)

『青少年アシベ(1) (アクションコミックス(月刊アクション))』。原作、構成は森下裕美。作画、笑平。小学校低学年だったアシベたちが高校生に。 水族館にいるゴマちゃんに会いに行き、全裸でいっしょに泳ぐアシベ。ネパールカレーをもってくるスガオ君。水槽…

はるたんの思考と言語がコドモでコドモで。

『おっさんずラブ』第4話、「第三の男」。吉田鋼太郎と林遣都が田中圭をとりあっているところに眞島秀和が入ってくるというシェイクスピアばりにギッチギチの相関図ができて、外野の伊藤修子クソゲスで、どのばめんもおもしろい。 これまでスパイス程度に用…

読みながら、なぜジョンヒョンをおもいだすのだ。

表紙を見て「悪い、俺は性格が悪い。」かと早とちり。現代短歌の同語反復に馴れすぎてしまった脳。正しくは『俺は性格が悪い。 (EDGE COMIX)』。四宮しの。 登場するのはだいたい大学生たち。連作、群像劇。 だから院生がでてきたりほかのカップルのエピソー…

(神と野獣の都)

短編集、四宮しの『色咲き (onBLUEコミックス)』。「第一話」の、他人の疵痕(きずあと)へのフェティシズムが文学的だなー、とおもう。登場人物全員が文学的な重苦しさを共有しているわけではなくて、パートナーとなるおとこの子がかんたんに、主人公…

テレビにでているときとはちがう、実直と自由。

コンサート、『美輪明宏 ロマンティック音楽会〜郷愁ノスタルジア〜』行く。 半生を語りつつ、ばめんに即した歌をうたう。『紫の履歴書』の名をだしながらも、そこに書かれた烈しさはない。若いころのばめんを演じてみせる口吻に、するどい、丸山明宏らしさ…

〈約束を破ったことがわかると、父は鞭打ちの罰を加えた。しかし、生来の自然好きの少年には、どのような罰則も無駄だった。鞭打ちの影におびえながらも、いつも父の目を盗んでは出かけた〉

山と渓谷社、加藤則芳『森の聖者 自然保護の父ジョン・ミューア (ヤマケイ文庫)』。 ジョン・ミューアの伝記。日本ではなじみがうすいからどの出来事も等しくあつかっている。少年時代、青年期、壮年、といった具合にどこまでも。 神秘主義者ではなかった。…

「ここ…俺の部屋だよな…一瞬他人(ひと)の部屋のような気がしちまったが…」

(モーニング KC)" title="BOX~箱の中に何かいる~(3) (モーニング KC)" class="asin"> 諸星大二郎『BOX~箱の中に何かいる~(3) (モーニング KC)』。パズル、ゲーム、ルールの収拾がつかなくなって──規則から逸脱することのない物語も困るが──台詞の量が増えて…

「光二君は谷さんたちの時も手伝ってくれたし……その…頼りにもなるし……それから……」「ど真ん中ですか?」

諸星大二郎『BOX~箱の中に何かいる~(2) (モーニング KC)』。 「あたし 気付いてたんです あなた 実は 男が好きな人ですよね?」

「何かすごいことが起こってあたしの日常を吹き飛ばしてくれないかなと そんな風に思っていたんです」「すごいこと? お前 霊感少女なんだろ なら日常はすごいことばかりなんじゃないか?」

『BOX~箱の中に何かいる~(1) (モーニング KC)』。諸星大二郎のアンテナにいま引っかかっているものを、ひとつの箱のなかに入れて物語に仕立てあげる。短編でもなく、連作でもない不可逆的なホラーコメディ。全3巻。 登場人物の光二と惠がBL! といって読みす…

「自然学者のジョン・ミューアが言っているよ。『パン一切れを持ち、垣根を飛び越えろ』」「垣根のなかはぬるま湯ってことか」

ロバート・レッドフォード主演の『ロング・トレイル!』(2015)、監督はケン・クワピス、脚本リック・カーブ(マイケル・アーント)とビル・ホールダーマン。製作には(もちろん)ロバート・レッドフォードの名も。 原作はノンフィクション作家ビル・ブライ…

俳句 アニミズム 芭蕉×酒堂

中沢新一と小澤實の対談集『俳句の海に潜る』、ふたりともたのしそうだ。 ふたりを結びつけたのは細見綾子の〈そら豆はまことに青き味したり〉。歳時記では解説されることのない蚕豆(そらまめ)のもつエロティックな象徴性、俳句なるもののつよさ。 中沢 俳…

完成は死だが魂は続く

26編のオムニバス『ABC・オブ・デス2』(2014)、良かった。おもわず買った。 テーマは「死」。そこには酷薄もあるし不条理もある。監督のえらびかたが巧く、バラエティにも富んでいた。 さいしょに仰天したのが「Badger アナグマ」。自然をあつかう番組のパ…

「DNAに蓄積してきたものが、僕たちにも伝わってるんだ」「トカゲであった頃からの記憶?」「陸上競技のトラックに立とうとする人間は、たぶん、物覚えのいい遺伝子を持って生まれてついてしまったんだ。追体験しようとしてるのさ。遠い昔の快感を」「セックスもおんなじ?」

1994年の映画『800 TWO LAP RUNNERS』。監督は廣木隆一。脚本加藤正人。 原作の小説は川島誠『800 (角川文庫)』。 川島誠は児童文学に《性》をもちこんだ野心的で魅力ある小説家であり、それが要るひと要らないひとで評価が分かれる。 映画も、のっけから体…

「接待とは五分と五分の力やす。競り合ってるときの決め手だす。力がちがうときには接待でごまかされません!」

とんねるず主演、森田芳光監督『そろばんずく』(1986)。 森田監督の映画には古典落語みたいなハナシと新作落語みたいなハナシがあるが、『そろばんずく』はもちろん後者。 あたりをやさしくつつむ円熟は、まだない。攻撃的な批評精神。それをひとは「わけ…

〈そいつの声を聴いたのは 思春期の頃 おまえは自分を異常だと思ってるんだろう そしてそうじゃないと誰かに言ってほしいと思ってる 心の声とはそういうものだとわかっていたので気にしなかった 人は自問自答するものだということも〉

俺は灰島かなで いくつかのアルバイトをかけもち 小劇団に身を置く25歳 恋人の森田勇紀はバスの運転手をしている30歳 舞台の上では老人にもなるし 幼児にもなる 時には女になることだってある 30だろうと 60だろうと 学生や子供になり切るし それが許される…