大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

小説

〈秋田は、アイマイより明晰な論理性を好む。「小説」のみならず、芸術的行為に時としてやむをえず必要とされる、アイマイさ、ねたましさ、暗さ、いいかげんさ、身勝手さのようなものは、秋田にない〉

富岡多恵子『漫才作者 秋田実』。 秋田實が26歳のとき、漫才師のエンタツ・アチャコは35歳と34歳。 「エンタツさんは、私の台本が出来上る度に、子供のように率直に感激した。私は私で、エンタツさんを喜ばせるために、夢中になって新しい台本を書いた。その…

フリーマガジン整理

ダイヤモンド社のリトルマガジン「Kei」2016年11月号、『論語と算盤と私』を著した朝倉祐介が〈事をなすにあたって何よりも大切なことは何か。私なりに考えるに、それは「旗を掲げる」こと、すなわち、自分の信念や大義を掲げて、周囲の人々に向けて発信し、…

恋愛について

野島伸司『スコットランドヤード・ゲーム (小学館文庫 の 2-1)』。 「もしかしたら愛とは、命の灯火が消えてからじゃないと分からないものかもしれない。花火のように、消えた後、そっと暗闇の中でしか」 「僕らが日ごろ愛と呼んでるのは、全て恋でしかない…

〈愛しているものや美しいもの、ずっととっておきたいくらい大切なもののいちばんいい保存方法は物語にすることだ〉

絵本についてのエッセイ、江國香織『絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)』。 〈友情というのは厄介な代物で、言葉にするとたちまち空々しく鬱陶しくなってしまうのだが、だからこそ、正しく紙の上に写すことができたら、と憧れる〉など、絵本をとおしてだ…

2009年

野島伸司脚本『ラブシャッフル』。 「普通の人間達は、傷つけても構わない。実際、簡単に再生もするんだから」

〈女には魔の時があって、分らないうちに身を滅ぼすことがあるのだ〉  芝木好子「聲」

愛のかたち (1982年) (集英社文庫)作者: 瀬戸内晴美,日本ペンクラブ出版社/メーカー: 集英社発売日: 1982/04メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る瀬戸内晴美・選『愛のかたち (1982年) (集英社文庫)』(日本ペンクラブ編)。 岡本かの子「家霊」…

〈父がガンで死にそうな時、看病の合間をぬって、私は彼に抱かれに行った〉

『静心』の文庫化、『究極のいい女 (角川文庫)』。大石静のエッセイ集。 『オードリー』の他にも、『ふたりっ子』の後に私が書いたドラマの中に、爆発的ヒット作はない。『オトナの男』『DAYS』『ふたつの愛』『あきまへんで!』『アフリカの夜』『終のすみ…

千葉君のかわいさについては触れぬ距離

大石静脚本の『家売るオンナ』を世間知らずのおとこの子と観ること多く、そこから得るもの大きいが、妙齢女子がシェアハウスに至る回でおとこの子が「こんな生活あるわけねえ」と夢にもみなかったという顔していて、いちいちおしえはしないけど、となりでこ…

〈この世からいちばん小さくなる形選んで眠る猫とわたくし〉

マヨネーズのふしゅーという溜息を星の口から聞いてしまった アークトゥルス、スピカ、デネボラ、星の名をポケットに入れて非常階段 蒼井杏の歌集『瀬戸際レモン (新鋭短歌シリーズ27)』。書名からもわかる、あるきだしたばかりのとしごろ。 地下鉄の券売機…

畑正憲『ムツゴロウの博物志 (続々) (文春文庫)』。 〈イヌは不思議な動物である。どんなにもうろくしていても、自分に恩恵を与える人間を正確に記憶してるらしく、八百人の寮生の中から、餌をくれるものを見分け、足元にじっとうずくまっていた。さいそくが…

「いいからついてこいよ。新宿二丁目におもしろい店があるんだ。今日は四月四日だろ。特別な日なんだ。三月三日はおひなさまで、五月五日は子供の日だろ。となると、四月四日はオカマの日だ。さっ、行こう」

つかこうへいの文章は、ノッてくるほど冗談口ばかりになり臨場感が増す。それで登場人物たちの抱える事件が重いんだか軽いんだかわからなくなることしばしば。それぞれの時間的な思考や傷が霧散してしまうのだ。その変わり身の早さは演劇的で、小説の方法と…

〈男は、本能の動物であると同時に、すごく世間とか常識とか大切にする生き物でもあるらしい〉

森村桂『桂のブライダル講座 (光文社文庫)』。 男って単純なのだけれど、落とし穴がひとつあるのに、私は気がつかなかった。 「いいよ、いいよ」 というのが、男の場合は、 「困るよ」 の場合が、いくらでもあること。女の場合の、 「いやよ」 は、いいわよ…

〈執念深いのと、時間の観念が無いのは、生き物屋のトレードマークである〉

生物映画についてのエッセイ、畑正憲『もの言わぬスターたち (中公文庫 A 24)』。〈好きなことをして毎月お金を貰えることが、ぼくには新鮮な驚きであり感動であった。 大学院の頃はひどかった。完全な無給生活。アルバイトだけが頼りだった。生活費をギリギ…

『走ることについて語るときに僕の語ること』の村上春樹とは姿勢がまるでちがう。そのことでどちらもおもしろい。橋本治『いつまでも若いと思うなよ (新潮新書)』。

〈僕が「まじめに走る」というのは、具体的に数字をあげて言えば、週に60キロ走ることを意味する。つまり週に六日、一日に10キロ走るということだ〉

靴音と、呼吸音と、心臓の鼓動とが絡み合って、独特のポリリズムを作りあげていく。 村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)』。〈ただ黙々と時間をかけて距離を走る。速く走りたいと感じればそれなりにスピードも出すが、たとえペー…

瀬古利彦と橋本良亮は誕生日いっしょ

瀬古利彦『瀬古利彦のすべてのランナーに伝えたいこと (中経の文庫)』。〈自信の経験を振り返ってみても、マラソンはひとりでは走れない種目だと思う。ひとりで行うには孤独すぎるのだ〉 〈指導者がいないならば、仲間を作るのも有効な手段だと思う。仲間と…

〈鯛茶がうまけりゃ男は離れないと思う〉

大竹まこと『完全版 こんな料理で男はまいる。 100レシピ (カドカワ・ミニッツブック)』。女が、男につくる料理という体で。「好みを探って時間をかけるより、誰もが好きなものをつくったほうが早い。好き嫌いを聞くのはもっと後でいいんだ」 男たちは決して…

ミ・ピアーチェ(好きです。気に入りました)

岩田デノーラ砂和子『おしゃべりのイタリア語』、おしえてもらって読んでる。このばめんではこんな会話、という想定問答。だからなるほど重複はあり、だけど含意はその都度一寸ずつちがってくる。 あるいは、「あらまあ!」にも Ma dai! や Ma va! や Macché…

〈その場にいなくても、一瞬一瞬が愛おしいと思える作品を、私は心をこめて選びました〉

中村のん『70’HARAJUKU (小学館SJ・MOOK)』。〈2014年11月に行ったイベント、“中村のんプレゼンツ『70’s 原風景 原宿』”で展示した作品に、さらに写真家たちに探し出してもらった新たな写真を加えたものです。 写真家たちの何人かは、私の20代からの仕事仲間…

きっと採点する世界

古雑誌整理、『週刊文春』2015.11.5で「いまそこにある『童貞』危機」──中村淳彦(『ルポ 中年童貞 (幻冬舎新書)』)と石田衣良の対談。中村淳彦が〈中年童貞〉を介護職の現場や経済面など社会性から論じようとしているのに対し、石田衣良がただただセックス…

〈マニュアル化された登山に物語など存在しないのだから〉

探検家・角幡唯介による読書日記、書評集『探検家の日々本本』。〈読書は読み手に取り返しのつかない衝撃を与えることがあり、その衝撃が生き方という船の舳先をわずかにずらし、人生に想定もしていなかった新しい展開と方向性をもたらす〉──。 〈マラリアに…

がっちゃん「昔は隠すのみで、SMと言ってもSMと言っても、言っても絶対にお客同士は会わないのが普通でしたから。SMバーで客同士がみんなで会話をするようになったのなんて、最近の話だと思いますよ」

二村ヒトシ、金田淳子、岡田育のトークイベントがまとめられた『オトコのカラダはキモチいい (ダ・ヴィンチBOOKS)』。発言者のプロフィールを知らずに読んで、岡田育を年配の腐女子だとおもっていたら、金田淳子のほうが年上だった。BLに対して現役なのが金…

アントニオ猪木  「馬場さんはエリート。名前があったからね。力道山にも殴られたことはなかったんじゃないかな。オレは雑草。どうなるか分からない立場だった。でも、張り合うような気持ちはなかった。同期の連帯感があったし、5歳の年の差は大きかった」

電気のあと、プロレス脳になる。狂気とか虚言というもの。教室の片隅でつぶやき合うものではなくて、リングの中央で明言されるもの。 それらをときどき書きとめてある新聞や雑誌。出版不況を聞くことも多いけれど、記事の一部がKindleで買える。わるくない。…

「同じ基本構造で、部分をつまんだり引っぱったりして、別の形に練り上げられているだけです。基本的にはすべて同じ形で、祖先の影響を完全にはふるい落としていない」  リチャード・ドーキンス

「編・訳者あとがき」のエピグラフに、トーマス・ヘンリー・ハックスレーの言葉が二つ。 「何かについてすべてを学び、すべてについて何かを学ぼうとせよ」 「きっぱりと決断して行動し、その結果を引き受けよ。優柔不断は何の良い結果も生まない」 1991年の…

「人間を信じるのは、疑うのと同じくらいいけないことだ」  安部公房

ドナルド・キーンと安部公房の対談集『反劇的人間 (中公文庫)』、まえがきは安部公房。みじかいながらも視点を変えて引っくりかえすなめらかでしっかりと濃い安部公房で、わくわくする。冒頭で客をつかむ。 キーンさんはコロンブスの末裔である。あいにく大…

吉田照幸『「おもしろい人」の会話の公式 気のきいた一言がパッと出てくる!』。

〈「もし」ってやつは、星みたいに無限なんだ〉

『週刊文春』2015.9.10、「私の読書日記」は穂村弘。 紹介されているのは池辺葵のマンガ『プリンセスメゾン』、沼正三『マゾヒストMの遺言』、それからサリー・ガードナー『マザーランドの月』。 マザーランドの月。一冊の本ではあるけれど、ヤングアダルト…

国定忠治「俺よりも倍も長く生きたんだから贅沢言っちゃいけねえよ。それじゃあ、おさらばするよ。又、逢おうか」  菅原文太「忠治さん、一寸待って、一寸…」

『六分の侠気 四分の熱 菅原文太と24人の男たちそして忠治』、ラジオ番組「菅原文太 日本人の底力」から24人。それと架空のあいてとして国定忠治。 「女性が慰問に来ると聞くと皆さん喜ぶのだそうです。男性が来ると聞くと、なーんだ男かよと言われるそうな…

〈教授のように、いいかげんな仕事をして辞書に形だけ名を刻むのではなく、俺はどの部署へ行っても、『大渡海』編纂のために全力を尽くそう。名前など残らなくていい。編集部に在籍した痕跡すら消え去って、「西岡さん? そういえば、そんなひともいましたっけ」と馬締に言われるとしても、かまわない〉

三浦しをん『舟を編む (光文社文庫)』。 西岡は「誠実なのね」と女から賞されたためしがなかった。必要に応じて嘘もつくし、気分に応じて優しさの量を調節する。それが本当の誠実ってもんじゃないのか、と半ば開き直っている。必然的に、どの女とも長続きし…

〈小説を書くという作業は、一つにはデリカシイのなさへの告発であるから、あえて、暴力男をにくみきらうと揚言せずにはいられない〉

田辺聖子『女の長風呂(2)』。〈人間、四十のゾロ目をすぎてみれば、人生に「怪しげなふるまい」なんてあるはずがないと、と思うようになった〉 私の場合、小説を書くとき、ある情趣が湧いて男を描く。それは、ほんの些細なことを、男にもらって、感興を起…