大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

映画

「このときを待ってたんだ。スロットじゃなにも生まれない」

マリヤッタ・クレンニエミ原作(絵・マイヤ・カルマ)の児童小説『オンネリとアンネリのおうち』(2014)。監督はサーラ・カンテル。 大家族のなかでさびしいオンネリ(アーヴァ・メリカント)と、離婚家庭にあってさびしいアンネリ(リリャ・レフト)。ふた…

「近ごろの犬は、じぶんの幸運がわかっていない」

『ロイヤルコーギー レックスの大冒険』(2019。ベルギー)。 皇室で寵愛された若きレックスが、おなじコーギーであるチャーリーに嵌められ、そとのせかいの施設行き。そこでのファイトクラブなど経て帰還する物語。 レックスも、ロマンスのあいてとなるワン…

迂回という最短

『のぼる小寺さん』(2020)。原作は珈琲という名のマンガ家による。監督古厩智之。脚本、吉田玲子。 登場する人物たち、すこしずつはみだしている。オタクであるとか、いじめられっ子だったとか。 伊藤健太郎の扱いがおおきい映画ではあるけれど、皆を等分…

「なんだろうね……。弱虫なだけ、みんな。ちょっと成功して、忘れ去られるのが恐いの」

「いま、崖っぷちにいる。その心理を自分で取材してる。そんなことも察しないでヨタ飛ばしてっと、ロクな編集者になれねえぞ、野坂」 「……野坂じゃないし。五木だし」 阪本順治監督『一度も撃ってません』(2020)。主演は石橋蓮司。出演に大楠道代、桃井か…

昭和30年代。大阪。

舞台は、大阪。文楽の人形遣いの役である藤山寛美と、そこに入っていこうとするエルザ(イーデス・ハンソン)のやりとり。 「アタシねえ、アンタに礼いわなァ思てまんのや」 「なんでや」 「恥ずかしいこっちゃけど、アンタアタシに文楽の見方ちゅうものを教…

小道具として『銀河鉄道の夜』『ワンピース』

映画『五億円のじんせい』(2019)観る。主演は望月歩。『真夏の少年』で瀬名悟(佐藤龍我)の兄だった。世間になじまぬ透明な佇まいが印象的で、それは素なのか演技なのかと。惹きつけられた。 五億円の寄付によって小児期の難病を克服した少年が、その物語…

きっとだれもが偽善者で、メンヘラ。

『来る』(2018)、原作は澤村伊智(『ぼぎわんが、来る』)。監督、中島哲也。脚本は共同で中島哲也と門間宣裕、そして岩井秀人。リアリティ凄く、人物がくっきりとしている。「わかんねえす」と言ってる高梨(太賀)と「あたしばかだから」と口にする比嘉…

不可解な恐怖は欠いていた

製作サム・ライミ、監督アレクサンドル・アジャ。愛着ある名だがどちらもスケールダウンしつつあり、『クロール 凶暴水域』(2019)も浸水した一軒家のなかでワニと戦う小じんまりしたもの。予告編ではわくわくできたんだけど。 ストーリーには挫折と和解。…

「この銀メダル、きみのだろ」「ちがうよ。だって、捨てたんだもの」

2013年の映画『君に泳げ!』。「国民的弟」であるウサン(イ・ジョンソク)と、天才肌のウォニル(ソ・イングク)。ウォニルはふざけてばかりいるが、そこに見え隠れするのは陰のある物語。 少年期のウォニルは金メダルだった。ウサンは銀メダル。時経て二人…

「忘れっぽいことは問題じゃないんです。忘れることが問題なんです」

2018年の映画『ハナレイ・ベイ』。吉田羊、佐野玲於、村上虹郎どのひとも活躍めざましく、そのためにずいぶん昔の映画のような印象もある。 原作は村上春樹『東京奇譚集』のなかの一編。やや説明的なところを俳優にゆだねて映画は佳品となっている。脚本・監…

ケビン・コルシュ&デニス・ウィドマイヤー監督映画

リメイクされた『ペット・セメタリー』(2019)、出演はジェイソン・クラーク、エイミー・サイメッツ、ジョン・リスゴー、アリッサ・レヴィン、ジェテ・ローレンス。 スティーヴン・キング原作の、民話的古典。「忠告」や「禁忌」を越えてしまう物語。 恐怖…

「悲しみは、にんげんの自由をうばいます。関節炎よりも、もっと」

「脇道に反れるのも、手品もなし。薬物もなしです」 1906年を舞台にした『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』(2018)。20世紀初頭のコスチュームプレイということもあってか、画や演技に保守的なところがある。現在は観光スポットのウィ…

(天使が見たもの)

2019年の90分映画。邦題は『ゴーストホーム・アローン』。美 少年のように繊細なタイトルで、半角やナカグロの意味なんてことをかんがえてしまう。 暗闇が怖いおとこの子、ということ。そして外からの侵入者はいない。「ゴースト・ストーリー」でも『ホーム…

ジュリーとゼリー

韓国映画『クワイエット・ファミリー』のリメイク、『カタクリ家の幸福』(2002)。監督、三池崇史。作品内容が暴力的でもあるけれど、撮りかたもまた乱暴で、しかし手堅い。 三池映画は出来が良くないときもままある。それでいて、キャスティングはつねに魅…

日活ヤクザバンパイア

『極道大戦争』(2015)。主演市原隼人。監督三池崇史。小ネタのオンパレードでたとえば出番の多いでんでんがケーシー高峰みたいなホワイトボードレクチャーするとか、三池崇史のセルフパロディがいろいろあるとか(タイトルも中身も『妖怪戦争』なのだし)…

「にんげんになれなかったじぶんを恥じるように、ひっそりと去っていく」

『泣き虫しょったんの奇跡』(2018)。主演は松田龍平だが、早乙女太一、妻夫木聡、染谷将太、永山絢斗、野田洋次郎、渋川清彦、上白石萌音、新井浩文その他、新進の二枚目だけでも大勢でていて、しかし将棋の、奨励会の話だからみんなで幸せになることはで…

よい歪み、わるい歪み。

『嘘八百 京町ロワイヤル』観る。とても良かった。 深すぎない。ダレない。監督は武正晴。脚本・足立紳、今井雅子。脚本家によるノベライズはPARCO出版から。アツい。 前作『嘘八百』は堺市、今作では京都市の協力があった由。ロケ地スタッフキャストなど。…

純愛。騎士道的な。どこか虚言のけはいもある。

大人計画『キレイ〜神様と待ち合わせした女〜』を観て連想したのは『華麗なるギャツビー』。 《ケガレ》《まなざし》《花》といった。 成就しない。それなのに完成はある。

「売春婦がつぎつぎにころされる 事件が クリスマスシーズンに起こった」

『ロンドン・ロード ある殺人に関する証言』(2015)。 2011年初演のミュージカルを映画化。スリリングなつくりに、にやりとする。 イプスウィッチ連続殺人事件と検索すればでてくる実際の事件、その狂騒や差別がすぐ目のまえのことのようだ。 えがかれるの…

「じぶんの死を想像して生きようともがけば、どんなことでも成し遂げられるはず」

「体当たりの演技が売りじゃなかったのか」 「演じることが怖いから、何にでも挑戦しただけよ」 『ファング一家の奇想天外な秘密』(2015)。原作はケヴィン・ウィルソンの小説『ファング一家の奇想天外な謎めいた生活』。 なにしろキャストが佳い。ニコール…

アレクサンドリア、世界の結び目。

「ナショナル・シアター・ライブ」の『アントニーとクレオパトラ』(2018)、二人の死が語られるラストを冒頭にもってきたので、おどろいた。そういういじりかたを、予想していなかった。 『アントニーとクレオパトラ』が書かれたのは四代悲劇のあと、比較的…

『少年たち』

映画『少年たち』観た。美しかった。胸を衝かれた。 物語の理想としては、環境から切り離された個性によってドラマが展開するべきだろうとおもうけれども、少年という概念は飢餓感や孤独を呼び寄せずにはおかないわけで、映画らしくいくらか話の筋をみせるた…

生首。森がうごくこと

ナショナル・シアター・ライブ『マクベス』観る。冒頭に制作者の解説映像あり。 もともとの舞台は11世紀。「超自然的な力を信じた時代」である。設定はそこから近未来へと変わる。 現代のイギリスがかかえる問題をかんがえると欧州連合、多民族、他宗教、経…

「青二才の傲慢さほど、醜いものはない」

冒頭で桂文枝、オール阪神、ジミー大西、笑福亭鶴光など芸人わらわら現れて、キャストがにぎやかなだけの映画かとかるく観はじめるが、なかなか、どうして。 映画『のみとり侍』(2018)。原作は小松重男(1931−2017)の短編集『蚤とり侍』。 助平だけでは、…

語られぬところにも欲望はある

老女が、煙草を吸う。だれにもたよらぬ気むずかしさをみるようで、出だしからかなしい。それでもここまで生きてきたのだ、というところに救いもある。 スウェーデン映画『サーミの血』(2016)。十代のときの家出と、恋。 観光客相手の職業性や、文化人類学…

「もう後戻りはできない。新天地に行くか、川に沈むか」

『レミングスの夏』(2017) えがかれるのは、14歳の夏。それを18歳の「僕」が回想するかたち。ある復讐を達成し、「僕」は待っている。 「僕」の名はアキラ(菅原麗央)。おもいだすのはナギ(前田旺志郎)のこと。 前田旺志郎が好い。「行動力」と「迷い」…

「親父が言ってたっけ。『味は見た目だけではない』」

武正晴監督『カフェ・ソウル』(2009)。脚本(金杉弘子)は甘いところもあるけれど、カメラワークがしっかりしている。 追いかけっこがはじまったり(『嘘八百』)、育ったばしょがおんなじだったり(『百円の恋』)と武正晴監督らしいばめん、傾向をかんじ…

「『骨董品』になったら、また店においで」

中井貴一と佐々木蔵之介がならぶ『嘘八百』。包容力と胡散臭さをもつ二人。大阪で、骨董品をめぐるコンゲーム。 出演者が皆胡散臭さをまとっている。近藤正臣、芦屋小雁、木下ほうか、坂田利夫……。その辺りでじゅうぶんにおどろけるが、桂雀々まででてくる。…

片桐はいりをサブカルに押しこめようとする力

オムニバス4編。合わせて40分ほど。『片桐はいり4倍速』(2009)。 1本目の「受験生」は、蒲田在住の受験生が片桐はいりをときどき見かける話。 「あ、片桐はいりだ」 生活圏が一緒なのだ。だからどうということもない。地元でよく見る芸能人。そのためにリ…

こわいサンタクロース

フィンランドの映画にはおおむね生活がある。 経済と、貧しさ。それを強調するように家庭は不幸。 ダークファンタジー『レア・エクスポーツ 囚われのサンタクロース』(2010)。採掘をしていたらなにかがでてきた、というかそれこそが目的だった。現場ではそ…