大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

(――夏休みの思い出はバイトと部活のフルコース! あっという間に溶けていった)

じゃのめ『黄昏アウトフォーカス overlap』。続編、番外編。「恋色ソフトフォーカス」「夜の空に光るもの」など。『黄昏アウトフォーカス』の「ドラマCDアフレコルポ」や『残像スローモーション』の「プロローグ」も。 真央と寿が夜に散歩をするだけの「夜の…

「こうやって何回も変更を重ねて 台本は出来上がるんですよ」

じゃのめ『黄昏アウトフォーカス』。高校の、映画製作部。 入寮初日 寒い春 初めまして よろしく と言った 俺の手を 取りもしないで 「…どうも」 冷たい目が 近づくな と 完全に閉じてた キャメラ担当の土屋真央。同室の大友寿がゲイで、付かず離れず、詮索…

「あんたがいちばん謝らんならん相手はもうこの世におらん」

崔哲浩の脚本・監督・出演映画『北風アウトサイダー』観る。 崔哲浩は在日三世だが、物語の匂いは二世のもの。オモニへの思慕だろうか。あくまで泥臭く、野心と感傷をナイマゼにした作りが良い。素直に進展してきた問題でもないのだから。 個人のエゴよりも…

〈虫も 人も 皆うつくし〉

我妻恵美子を観たくて東京文化会館 小ホール。舞踏の摂取。非言語的な。性差のない。社会生活とは異なるテンポを欲して。 「シアター・デビュー・プログラム 『虫めづる姫君』」観る。クラシック音楽と、舞踏。しかも日本の古典文学。それぞれのしっかりとし…

「人間には、二通りあるの。……いなくなるといなくなるタイプと、いなくなってもいるタイプ」

三木聡脚本・監督『図鑑に載ってない虫』(2007)。赤塚不二夫みのある『真夜中のカーボーイ』か。悪ふざけの連続のようで、急に泣かせる。 編集長(水野美紀)に命じられ、臨死体験ルポを書くべく「死にモドキ」探しをはじめる「俺」(伊勢谷友介)。相棒と…

YUJIRO IN EUROPE

映画では、皆さんの皮膚に、寒暖、つまり、冷たい温ッたかいの感じを差し上げることはできませんが、ええそれは、色を見て頂ければ、わかると思います。 画面がいきなりバーン! と変わると、近代設計の粋(すい)を凝らした、それこそ、本当にイカす道路が…

「日本では森は“自然”を象徴するが、ヨーロッパでは“超自然”を象徴しているのである」

2015年の佐々木蔵之介一人芝居『マクベス』に合わせて刊行された『動く森――スコットランド「マクベス」紀行』(扶桑社)。これが、マクベスの副読本としてじつに効く。 キャプションや脚注もぜんぶ、佐々木蔵之介が書いたのではないかとおもわせてくれる一人…

女であることを隠していないがいまは男として生きる。

坂本龍馬 ええか! 総司がいつまでもオトコの格好して、刀を振り回しとる時代は終わりにせないかんのじゃ! 原作、つかこうへい。映画『幕末純情伝』(1991)。脚本・監督薬師寺光幸。 公開時は『ぼくらの七日間戦争2』との二本立てだったらしい。それで編…

人間の憎悪のゆくえ。

『ミネオラ・ツインズ』観る。ずいぶんまじめな演出だった。戯曲の迫力、疾走感、喜劇性……。既成の価値観に対する哄笑はうすれていた。 えがかれる物語世界の、歴史や思想にこだわったまま生硬で、演劇のもつ遊び、匿名/透明性、普遍的衝動をなかなか得られ…

(一人芝居の頂点)

アンドリュー・ゴールドバーグ演出『マクベス』(2015)。主演、佐々木蔵之介。一人で二十役。所は、病棟。女性医師に大西多摩恵。看護師、由利昌也。 精神を病んだ者が、すでにある世界を演じ、つづける(ここでは『マクベス』)趣向というか状態はありふれ…

「あーまあ蜆だから、漏れても淡水ですしね」

『おいハンサム!!』、第2話。 商談のときに、鞄のなかのタッパーの蜆がコトコト、コトコト活動している。 そのために、却って冷静な判断ができたり、「ちいさな命か……」と回想したり。 子らの幼少時ばかりではない。そのばめんに顔をだすのは、ちいさな蜘蛛…

「わたしをだましたのね? ひどい子ね」

ジョン・ポルソン監督『ハイド・アンド・シーク』(2005)。“イマジナリーフレンド”をめぐる娘と父の物語。出演はダコタ・ファニングとロバート・デ・ニーロ。 『裏窓』『シャイニング』『エクソシスト』など、引用による誘導が佳い。殺人事件が起こるのかな…

〈腑に落ちない日もあったけど〉

『連続ドキュメンタリー RIDE ON TIME』Season 4「なにわ男子 エピソード2 三年目の奇跡」。 正直、言うと。おれ「Time View」書いたの、あの、それこそその7人の想いもあって、というのもありますけど、みんなと泣きながら歌いたくて書きましたから。 よ…

「親方。あっしは真ッ直(つ)ぐを貫いてますんで」  亥之吉

スペシャルドラマ『必殺仕事人 2022』。 貧しい育ちの亥之吉(岸優太)と才三(西畑大吾)兄弟。幼なじみの美代(高月彩良)。かれらに優しかっただんご屋の夫婦(小林隆、杉田かおる)。 亥之吉と才三は正義感からバンクシーならぬ「晩来(ばんくる)」を名…

「女たちよ!」  『おいハンサム!!』

『おいハンサム!!』、脚本・演出、山口雅俊。イイ。 原作は伊藤理佐の『おいピータン!!』『渡る世間はオヤジばかり』その他。これがほどよくミックスされて、練られたファミリーロマンスになっている。 キャストも抜群。吉田鋼太郎、MEGUMI。娘たちに木南晴…

ジョエル・コーエンの『マクベス』。

どこへ逃げたら? 何も悪いことをした覚えはない。いいえ、この世に生きているのだ、ここでは、悪いことをして、かえって賞(ほ)められ、よいことをして、危ない目にあい、ばか呼ばわりもされかねない、そうだとすれば、悪いことをした覚えはないなどと、所…

「だからってすごすごと、脇役になれって? 冗談じゃないわよ、わたしはね、どこにでもいる主婦とはちがうの、特別な人間なの」

「夫人。あなたには家庭がある。ただの主婦に、もどればいい」 「それがもの足りないから……踊ってたのよ」 「大阪御ゑん祭 『夫人マクベス』」(2019)。マクベス夫人としての近藤芳正を軸に、起承転結、4つのユニットのオムニバス。 【起】テノヒラサイズ「…

原作は筒井康隆。

岡本喜八監督『ジャズ大名』(1986)85分。 役柄もあって古谷一行が格好良い。きっぱりと、明朗な科白。不戦派の大名を演じる。 戊辰戦争の要衝に、城がある。西から東から、新政府軍がとおりたい、幕府軍がとおりたい。どちらに与することもなく、通行させ…

「何が知りたいんです?」「だから。どっちがオトコなの?」

ポーラ・ヴォーゲル『ミネオラ・ツインズ 六場、四つの夢、(最低)六つのウィッグからなるコメディ』(訳・徐賀世子)。 訳者あとがき、解説(伊藤ゆかり)、年表や当時の人名録が付されるなど、親切なつくりになっている。戯曲そのものの短さもあるが。 伊…

「材料」「道具」「掃除」  中村外二工務店

シーズン2に入ってからの『准教授・高槻彰良の推察』が録りっぱなしで追えておらず、雑誌のたぐいは完全に脱落した。その辺りをちびちびと摂りつつ2022年をはじめたい。 『ペン』2022.2、表紙は伊野尾慧。京都・岡崎にできたラグジュアリーホテル『眞松庵』…

思春期。あいてが標準でないことに困惑する。

僕が小学四年生の時、唐突に兄が性教育を始めた。 クワガタの繁殖に取り組み出した時だ。 セックスに興味を持ち始めたと思ったのだろうが大きなお世話だ。 まんだ林檎『ニューノーマル・セックス』。性教育と高校生。各話完結なので、お色気シーンが入るとド…

笈田ヨシ、米寿。

KAAT 神奈川芸術劇場にはダンスばかり観にきている。 伊藤郁女、笈田ヨシ『Le Tambour de soie 綾の鼓』。 能の「綾鼓」。演劇として翻案した三島由紀夫の「綾の鼓」(近代能楽集)。そこへダンス。“モダン能”となって世界をまわる。テキストは、ジャン=ク…

「さみしい音だが、匂いは佳い」

山田裕貴、松雪泰子の『海王星』。 「寺山修司が『天井桟敷』結成前に書いた未上演の音楽劇を新生PARCO劇場でついに初演!」とチラシに。古典と呼んでもいいが、若書きである。 物語から連想されるのは宮沢賢治『銀河鉄道の夜』やツルゲーネフ『はつ恋』。そ…

観客 「『犬殺し』って何ですか?」

演劇実験室◉万有引力『Ø 迷路と死海 ―演劇零年◉見えない演劇!―』。 台本は〈寺山修司戯曲集より〉。演出・音楽・美術はJ・A・シーザー。構成・共同演出に高田恵篤。 シアター・アルファ東京、こけら落とし公演として。久しぶりの高橋優太出演。さらには根本…

「もしこのまま漂流したらどうすんだよ。漂流教室みたいにさ。一番漂流してほしくねーよ、この教室」

扉座『ホテルカルフォルニア ―私戯曲 県立厚木高校物語―』観る。一夜だけの特別公演『山椒魚だぞ!』付き。 客入れから賑やかで、かつての劇場の期待とざわめき。祭りの匂い。豊富な物販を、ベテラン俳優たちが売っている。公演前の場内を売り歩く姿も。 去…

トゥンク ティモシー・シャラメ ほか

やまもり三香『うるわしの宵の月』第3巻。 「手を出してみて 好きかどうか確かめるって おかしいでしょ 順番逆でしょ」 「だってオレ 今までこんな プラトニックなの 経験したこと ないからさ」 キスが駄目なら手をつなごう。琥珀は提案する。宵は「――でも …

「試しにって どこまで?」

やまもり三香『うるわしの宵の月』第2巻。 たぶん 私は くやしかったんだと思う いつも いつの間にか 向こうのペースに はまっていて だから どんな顔をするのか見たかった なにも起こっていないはずなのに、なにも起こっていないはずなのに激動、疾風怒濤…

〈この男 王子というより ヤカラじゃないか〉

「このマンガがすごい!」から。やまもり三香『うるわしの宵の月』。第1巻。 ひょろりと伸びた体躯 やや低めの声 親ゆずりの男顔 滝口宵 高校1年 性別、女。 「王子」と呼ばれる少女と、これまた「王子」と呼ばれる少年の恋愛物語。あいてに対して突っぱっ…

はいゆうたちのいるところ

『ヒルコ/妖怪ハンター』(1991)。原作は諸星大二郎。監督、塚本晋也。 特撮、SF、ホラーへのオマージュもふんだんに、画がしっかりと怖い。 出演は沢田研二、工藤正貴、上野めぐみ。ユーモラスな部分を沢田研二が受けもつことで、怖くて可笑しい諸星大二…

「これが九ヵ月前なら、わたしだって彼女の経歴に怪しい点があると言ったかもしれない……」

グレアム・グリーン原作の舞台『叔母との旅』。観るまえから涙があふれ、終演後にはボロ泣き。抑えられない。 映画でいうと『シラノ・ド・ベルジュラック』(1990)や『アマデウス』(1984)のような、堂々たる「告白」の物語。あるいは「告白」へと近づいて…