〈私は科学者だから、動物のタタリを深く信じ、そして怖れおののき、妻が生死の境をさまよっているときには、動物の霊に祈った〉
畑正憲『ムツゴロウの博物志 (〔正〕) (文春文庫)』。
大学にはいって最初に出席した授業は、沼野井春雄教授の動物学であった。
(……)
「オスにも女性ホルモンがあり、メスにも男性ホルモンがある。生きものってえのは、だからめんどうなんだ。性ホルモンをだす器官を全部除き、男性ホルモンだけを注射すると、ちっとも男らしくならねえ。ところがちょっぴり女性ホルモンを加えてやると、男性ホルモンの効果がみごとにでてくるんだ。料理に塩がいるのと同じことなんだな」