大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

「飛べるとおもったんだけどなァ……」

ぼくらの七日間戦争 デジタル・リマスター版 [DVD]
ぼくらの七日間戦争』(1988)。ひとの優しさをえがいた、いい映画だ。原作が宗田理で、音楽が小室哲哉宮沢りえを主演に据えた角川映画なのだから当たり前かもしれない。
学校に反旗をひるがえす中学生たち。といって猛猛しいものではない。稚気を稚気として心地好く肯定するところに宗田理らしさがある。教師と生徒、という対立にかさねるかたちで男と女の対立をあぶりだすのも巧くて綺麗だ。
教師間、クラスメイトのあいだばかりでなく、はっきりと、夫婦の溝。


男同士だって対立はある。
秘密基地でスポーツに励む男子たちのなかで、図書館派の中尾が本を読んでいる。
菊地「中尾。おまえもいっしょにやろうぜ」
安永「いいじゃないか、本人がやりたいことやってれば」
菊地「みんなで体力づくりしたほうが楽しいじゃないかよ」
安永「強制することないだろ」
これ! 観ていてびっくりした。多様性などと周囲に緊張を強いることばを用いなくても、ひとにはときに優しさがある。
中尾「昼間はありがとう」
安永「なに?」
中尾「運動……あんまり好きじゃないんだ」
安永「いやなら無理してすることないよ。……まさかおまえが来るとはおもわなかった」
中尾「どうして?」
安永「だって、おまえ優等生だし。学校に不満でもあるのか?」
安永の庇ってやる力。それを自覚してもいない。


リーダーシップをとれるスポーツマンタイプとして菊地と安永がいる。いずれ対立することになるが、女や大人の進入を拒む頑ななところが安永にはある。安永が孤立したとき、エールを送るのが中尾。この労り合いは凄い。美しい。


教師側には大地康雄笹野高史佐野史郎賀来千香子倉田保昭
監督、菅原比呂志。