大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

きっと採点する世界

ルポ 中年童貞 (幻冬舎新書) 高台家の人々 1 (マーガレットコミックスDIGITAL) 古雑誌整理、『週刊文春』2015.11.5で「いまそこにある『童貞』危機」──中村淳彦(『ルポ 中年童貞 (幻冬舎新書)』)と石田衣良の対談。中村淳彦が〈中年童貞〉を介護職の現場や経済面など社会性から論じようとしているのに対し、石田衣良がただただセックスの気持ち良さでもって解決したがっていて笑えた。
中村淳彦は1972年生で、〈中年童貞〉という新傾向と世代的に近い。『池袋ウエストゲートパーク』という〈ヒット作〉のある石田衣良は、代表作を持つために普段年齢を意識させないが、1960年生。〈中年童貞〉をいくら分析されても感覚として掴めないのかもしれないし、性行為に収斂する小説家らしい世界観をみることもできる。
「昔は親だけでなく、周囲の人がマッチングのサービスを提供してくれたからね。ふらふらしてると仕事を紹介してくれるし、このくらいの男性にはこのくらいの女性がいいよと見合いをさせて、ともかく結婚して子供をつくって安定して暮らしなさいと」(石田)


リーマンショックが決定的な分岐点になったという説があります。いまの二十代半ばくらいの子は、思春期に親の経済的理由で突然人生が変わったというケースが多いようです。そうなると国や社会を信用しない。オレオレ詐欺が蔓延するのも、当然の権利だ、富の再分配だくらいのモチベーションを持っている雰囲気です」(中村)

石田 セックスってもちろん最終的には性行為だけど、最初は普通の会話から始まるわけじゃないですか。その会話の段階で相手を疑っていたり、出し抜こうとしていたりすると、恋愛自体が難しくなりますよね。
中村 若い男たちがオクテになったという単純なことではないです。彼らが置かれた厳しい社会状況、経済状況に深く根ざした現象であることは言っておきたいですね。その過酷な環境の中で性悪説をとれない純粋な子がこじらせると、「中年童貞」化するんじゃないかと。

「恋愛」の「会話」において「相手を疑っていたり、出し抜こうとしていたり」という若さの指摘はするどい。
また、「恋愛」は「コストパフォーマンスが悪い」という意見を受けて石田が「二十年デフレが続くと、若い人の言う“お金を使うやつはバカだ”という考えは、生き残り戦略としてはいちばん賢いんです。ただ、それは自分一人が生き残るための戦略に過ぎない」。

石田 僕は、性愛には、経済格差がもたらす閉塞感を一発で破壊できるパワーがあると思っているんです。好きな人と付き合うこと、セックスすることの素晴らしさを、伝えていかなきゃ、と思いますね。


「文春図書館」の欄ではブルボン小林が「今の漫画はゴールではない『結婚』に取り組み始めている」として森本梢子高台家の人々 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)』を紹介。


おんなの子には結婚のあと。おとこの子には結婚のまえ。そこにそれぞれの生の成就のカギがあるのだろう。