『キャプチャー・ザ・フラッグ 月への大冒険!』、2015年のスパニッシュ・アニメーション。キャラクターが手足をあんまりうごかさない辺りに予算やノウハウをかんじてしまうけど、“CGアニメならではの快楽的映像表現”はとても好い。ウェットスーツに濡れ髪のおとこの子、とか。宇宙空間やサンセットで髪の色が変わるとことか。
無重力下でのおんなの子とのブチューも可愛らしい。映画のテーマ、ストーリーといった匂いの部分では『オデッセイ』『スペクター』だが、光と影の快楽は『スピード・レーサー』や『トロン:レガシー』。艶やかなラテン好みが快い。
「敵」は、背広にテンガロンハット、ウエスタンブーツの壮年富豪。白人至上主義的で口ぐせは「おまえは首だ!」とこれはもうドナルド・トランプ。この物語のアメリカ大統領は女性で、脚本家は未来予測をやや誤った。
宇宙開発で競争することの終わった世界。四十年前の探査機をもう一度利用する、なんてけっこう胸が熱くなるはずだけれども、かんたんに流す。この映画がえがこうとするのはヒールにしてもベビーフェイスにしても父子の問題。歴史的怨念、執着。
監督、エンリケ・ガト。