「いつか一緒にころそうって約束したじゃん。コイツのがしたら俺らがころされんだぞ」
ここで「逃がす」を「にがす」と読むか「のがす」と読むか。にがせばコイツはヒトとなるし、のがせばコイツはチャンスのことだ。森田剛は「のがす」と科白した。これが脳にのこった。
森田剛はおそろしい。声がせつない。風貌が世間知らずだ。美しさには浮世ばなれが要る。森田剛にあるのは詩人のそれ。
『ヒメアノ〜ル』、2016年の映画。脚本・監督吉田恵輔。サイコパス。シリアルキラー。なんだこの熱量。
悪にはスケールがもとめられるが、病は社会的な規模と無関係に伝わる。
奇妙な偶然から、森田が演じる役名は森田。へいきで嘘をつく。そして命令する。自己中心的な。
「おいおいおいおい、1ミリもうごくなよ」