野嵜好美と宇野祥平がでている横浜聡子の短編『おばあちゃん女の子』(2010)は気がかりなタイトルで、さいごに参考作品として高野文子「田辺のつる」が挙げられれば成程すとんと腑に落ちる。
併せて挙げられるのが三好銀「夜の電車」。
「あのね…実はね、お別れです。
電車の窓からハンカチふるから望遠鏡で見ててね。」
「バカ言ってないで早く帰って来い!」
日曜日の夜中12時過ぎ…
私はいつだって
電車に乗る事ができる。
乗ろうと思えばいつだって。
「夜の電車」
たいくつを壊す方法のひとつが家出だ。ひとをころすのといっしょで、実行されない家出はいくつもある。実行される家出もある。ひりひりと切実なものもあるだろうし、繰りかえされることがいやになったというのもあろう。
横浜聡子の映画は「夜の電車」と「田辺のつる」をつなぐことで、家出同様ままごともまた日常にヒビを入れる自立なのだと気づかせる。
三好銀『いるのにいない日曜日 (BEAM COMIX)』。これは『三好さんとこの日曜日 (Spirits neko comics)』につづく猫とおんなとおとこの暮らし。初期の大友克洋や吉田秋生のような、あるいは諸星大二郎のような、わずかな浮遊感。隣人は異界のひとかもしれぬという、じぶんもここをでていけるという、あやしいとびらの匂い。