大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

名句いくつか

覚えておきたい極めつけの名句1000 (角川ソフィア文庫)
読者として、短歌にかたむく時期があったり、俳句にもどってきたり。
神秘とか、そとのせかいをながめているとふしぎと俳句がほしくなる。
そういうときにもとめるのは、口語や自己憐憫ではない。

外(と)にも出(で)よ触るるばかりに春の月  中村汀女

角川学芸出版・編『覚えておきたい極めつけの名句1000 (角川ソフィア文庫)』。「はじめに」は編者代表として片山由美子櫂未知子の連名。

濃き墨のかわきやすさよ青嵐  橋本多佳子

兜虫(かぶとむし)一滴の雨命中す  奥坂まや

泉の底に一本の匙(さじ)夏了(おわ)る  飯島晴子

暗黒や関東平野に火事一つ  金子兜太


〈俳句は、特殊な言葉で作るわけではない。文語が基本になっていることと、古臭い言葉を使うこととは違う。
俳諧では、和歌・連歌において用いられなかった俗語・漢語・当世の詞、つまり日常的な言い回しや流行り言葉を「俳言(はいごん)」と呼んで積極的に取り入れた。それにより、和歌の雅(みやび)な世界との違いを明確にしたのである〉

撃たれたる鹿青年の顔をもつ  小室善弘

涅槃図の前をこの世の猫通る  松本澄江

めまぐるしきこそ初蝶といふべきや  阿部みどり女

さはやかにおのが濁りをぬけし鯉  皆吉爽雨

紫陽花剪るなほ美(は)しきものあらば剪る  津田清子

ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき  桂信子

柚子湯沁(し)む無数の傷のあるごとく  岡本眸

冬濤(ふゆなみ)に捨つべき命かもしれず  稲垣きくの

初雪や仏と少し昼の酒  星野椿

昼顔の見えるひるすぎぽるとがる  加藤郁乎

やませ来るいたちのようにしなやかに  佐藤鬼房

磨崖仏おほむらさきを放ちけり  黒田杏子

牡丹百二百三百門一つ  阿波野青畝

双子なら同じ死顔桃の花  照井翠

乳房みな涙のかたち葛の花  中嶋秀子

美しき緑走れり夏料理  星野立子

白酒の紐の如くにつがれけり  高浜虚子

虫籠に虫ゐる軽さゐぬ軽さ  西村和子

菜の花を挿すか茹でるか見捨てるか  櫂未知子

ぬばたまの黒飴さはに良寛忌  能村登四郎