大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

低予算だからグロい。それをさまざまなお色気でカバーしている。

ABC・オブ・デス [DVD]
『ABC・オブ・デス』(2012)、「死」をテーマにしたAからZまでの26本、短編ホラー映画集。
肌が合ったものから言うと、女体をまえに自慰をして、先にイかねばころされるリーグ戦「Libido 性欲」(監督ティモ・ジャヤント)。しゃべるインコがにんげんの浮気をバラす「Nuptials 結婚」(監督バンジョン・ピサヤタナクーン)。
サイモン・ラムリー監督の「Pressure 重圧」は、セックスワークで家族を支える母親が娘の誕生日に自転車をプレゼントしようと貯金やカレンダーみて計算している。よし、これなら買えそうだとイヤな仕事は断って、帰宅したらヒモ男がお金を持ち去っていた……。「死」にまつわる仕事をすることになるが、娘に自転車を買ってやれた。そういう「幸福」。
暴力はゆがみ、ひずんで連鎖していく。犠牲はある。それでも「幸福」だ。この「Pressure」は、いちばんストーリーがあって、しかも閉じていなかった。


しぬまでじぶんのからだから創造的フィルムをえぐって抜きとられる「Removed 切除」(監督スルディアン・スパソイエヴィッチ)。
リー・ハードキャッスル監督の「Toilet トイレ」はクレイアニメで、残酷で怪物で展開もある。「トイレにいくのが怖いおとこの子」──雑な造型なのにおとこの子かわいい。


「Vagitus 産声」(監督カーレ・アンドリュース)はSFで超能力で赤ちゃんで未来。低予算の短編をオファーされて、それ以上の仕事をしてやろうというかんじは「Dogfight」(監督マルセル・サーミエント)にもあった。


WTF! カオス」(監督ジョン・シュネップ)。短編だから政治や社会の風刺に手をだすのはむずかしいけれど、毒のあるコラージュ、ごった煮は他作品のつなぎという意味でも有用で、こんなんが原宿のハンバーガーショップで流れつづけていたら良いよね。
「XXL ダブルエックスエル」(監督ザヴィエ・ジャン)。肥満女性が変身しようと、浴室でじぶんの脂肪を切除しはじめる。血まみれで……。しぬだろうし……。食べかたも、極端な女性なのだ。フィクションとしてわかりやすい。画もしっかりしている。


「性欲」と「トイレ」とならんでゲイ的でショタで一方的な関係性が気持わるくて、キャスティングもみごとな「Young buck ティーンエイジャー」(監督ジェイソン・アイズナー)。少年は美しく、粘着する老人はキモさ全開。現代性を帯びた『ヴェニスに死す』で『蝿の王』。
さいごに少年は、老人の生首のまえでじぶんのパンツを下ろすのだけれど、何をしたのだろう。


ほかの監督にナチョ・ビガロンドアドリアン・ガルシア・ボグリアーノ、エルネスト・ディアス・エスピノーザ、アンジェラ・ベティス井口昇、アンドリュー・トラウキ、トーマス・マリング、ホルヘ・ミッチェル・グラウ、山口雄大、アンダース・モーガンタラー、タイ・ウェスト、ブルーノ・フォルザーニ&エレーヌ・カテト、アダム・ウィンガード、ジェイク・ウェスト、ベン・ウィートリー西村喜廣