大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

完成は死だが魂は続く

ABC・オブ・デス2 [DVD]
26編のオムニバス『ABC・オブ・デス2』(2014)、良かった。おもわず買った。
テーマは「死」。そこには酷薄もあるし不条理もある。監督のえらびかたが巧く、バラエティにも富んでいた。
さいしょに仰天したのが「Badger アナグマ」。自然をあつかう番組のパロディ、というスタイルにも笑うんだけど、それを演っているのがジュリアン・バラット(監督でもある)──あの、BBCコメディの一つ『マイティ・ブーシュ』の。
ここでテンション上がったこともあり肌の合うもの多かった。
「Deloused 駆除」(監督ロバート・モーガン)。ストップモーション・アニメーション。キャラクターたちは、皮膚を剥ぎとられたような質感こそリアルだけれど顔のパーツはばらばらで、語られるロジックもどこか変。ヤン・シュヴァンクマイエルクエイ兄弟の影響かなと調べてみたら、先行するかれらはずっと精緻でリアリズムだった。よりグロテスクなほうへと、ロバート・モーガンは進化しているのだった。


エリック・マッティ監督「Invincible 無敵」。遺産、そして力の相続。家族の者は老婆をころそうとするが、しなない。
アジア的な大家族の、しかも吸血鬼的であるという不気味さ。不死に老醜や荒廃が添えられている。萩尾望都ポーの一族』をおもう。
「Jesus ジーザス」(監督デニソン・ハマーリョ)は同性愛が宗教的な悪として、拷問にかけられるが、そこに蛮族的な救世主が現れる……。「イエスはゲイだった説」がアタマにあると、啓示をもたらしたこの野蛮なおとこが教祖かもしれないと。
文明的白人男性と肉体的部族の男の恋愛というとメルヴィル『白鯨』やE・M・フォースターの短編「永遠の生命」など。


アフリカの部族をえがいた「Legacy 遺産」(監督ランスロット・オドゥワ・イマスエン)。呪術的。アニミズム
オカルト・ホラーは「キリスト教における悪魔憑き」を指すけれども、魂が行き来するだけのオカルトもある。


「Roulette ルーレット」(監督マーヴィン・クレン)、ストーリーや背景とはべつに、若干のゲイ要素……?
「Split 破局」(監督フアン・マルティネス・モレノ)も佳い。


旅先から恋人に動画つき電話をする「Vacation バカンス」(監督ジェローム・サブル)。電話しているおとこは善良そうだけれど、いっしょに来ているおとこがクソで、きのうオンナを買った、その母親もセットで買うと安くなるとかアソコにドライバー突っこんだなどと、電話の相手もセックスワーカーも侮辱するようなおしゃべりをはじめて通話中にころされて。


スティーヴン・コスタンスキ監督の「Wish 願い」は、善と悪が戦うストーリーをもつ玩具に夢中のおとこの子ふたりがその世界に入っていってしまう話。みんなだいすきリアルイラスト。玩具ではかっこよかったファンタジーマン、なんかすごいくたびれたただの半裸のおっさんだし。おとこの子は「プリンセス!」と呼ばれちゃうし。いろいろ狂ってる、順当に。


「Xylophone 木琴」(監督ジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロ)と「Zygote 受精卵」(監督クリス・ナッシュ)はみごとに無垢で残酷。現実にはありそうもない徹底的な破壊。にんげんには真似のできない。


監督はほかにE・L・カッツ、ジュリアン・ギルビー、アレハンドロ・ブルゲス、アロハン・ケシャレス&ナヴォト・パブシャド、ジム・ホスキング(なんとなく割愛したが「Grandad 祖父」もイギリス流のおかしな短編だった)、ビル・プリンプトン、クリスティーナ・ブオジーテ&ブルーノ・サンペル、ロバート・ブーチェック、ラリー・フェセンデン、大畑創、トッド・ローアル、ロドニー・アッシャー、ジェン・ソスカ&シルヴィア・ソスカ、ヴィンチェンゾ・ナタリ、梅沢壮一。