大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

「自然学者のジョン・ミューアが言っているよ。『パン一切れを持ち、垣根を飛び越えろ』」「垣根のなかはぬるま湯ってことか」

ロング・トレイル! [DVD]
ロバート・レッドフォード主演の『ロング・トレイル!』(2015)、監督はケン・クワピス、脚本リック・カーブ(マイケル・アーント)とビル・ホールダーマン。製作には(もちろん)ロバート・レッドフォードの名も。


原作はノンフィクション作家ビル・ブライソンの体験記『ビル・ブライソンの究極のアウトドア体験―北米アパラチア自然歩道を行く』。学術的なアプローチをしつつの長距離遊歩道、健脚でもなく、そのまま映画にしたっておもしろくはならない。
映画は、中年男ビル・ブライソンとスティーヴン・カッツを老人ということにした。
かつて旅に明け暮れた老齢の二人がじぶんたちの心身を掻き立てるべく、3,500kmのアパラチアン・トレイルに挑む──年齢をいじるだけでストーリーが立ち上がってくる。
世界をあちこち回ってきた紀行作家のビル(ロバート・レッドフォード)だが、いまではテレビ番組のホストにばかにされている。「ノエル・カワードが『旅をするのは変人だ』と言っていますが」などといじわるなことばかり言われる。
新作を訊かれてビルも「作家に引退はない。酒びたりか自殺ですよ」とユーモアで応えるのだけれども。
そういう、いくつかのことがきっかけでアメリカ国内を《旅》しようとおもい定める。
その相棒が、かつて喧嘩別れしたきりのカッツ(ニック・ノルティ)というのが佳い。ビルの妻キャサリンエマ・トンプソン)があの手この手で反対(あるいは熟考を促す)のも泣ける。
カッツはどこかだらしないタイプ。だからいまでもおんなにモテる。飲むことが好きで「酒場の便所の防臭剤まで愛おしかった」なんて科白は泣ける。


「再会が遅すぎた」「俺も後悔してる」
そういうふうに、だれかと語り合う日は来るだろうか。