大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

「世界を認識することは、ものに名前をつけることではありません。世界はいろいろなものの響きでできていると考えるのが、ホモ・サピエンスの基本的な感覚と思考です」

虎山に入る
中沢新一虎山に入る』。書影は、チベットの絨毯の図柄。内容はあっちこっちに書かれたものや、講演、インタビュー記事。
「悪」や「ノイズ」を肯定する。それも外界のことではなくて、内側のこととして。「人間の心の中には、もともとノイズが立ち上がっている」──すっきりと、危険なことを語ってみせるのが中沢新一らしくて好い。
「広大なノイズの海の中からごく少数の要素だけを取り出して組み合わせて体系を作ると、文化的なものになり、道具ができて、そしてこの文化的な道具を取り入れると、人間は社会生活ができるようになるわけです」
「文化を作るためには、言語の能力、つまり少数の要素を取り出して組み合わせて、体系を作る能力がないとできません。しかし、それだけでは人間の自然的な要素を表現できないから、芸術を作ります。芸術とは、文化の体系性を使って、もう一回自然の要素を掘り起こし、文化が取り落としたノイズの部分を造形し直して、体系の中へ組み込むことです。これがアートの働きです」


「増殖するというのが、価値の重要な特徴である、じっさい私たちの生きている経済では、商品の交換がおこなわれ、価値が増殖していっている。
ことばの世界の中で、それとよく似たことをしているのが文学であるというのが、吉本さんの考えだ。『これは上着です』と言ったとき、ことばはなにかを『指し示す』働きをしているが、価値の増殖はおこっていない。ところが『これは天使の上着(のよう)です』というときには、価値の増殖がおこって、文学表現の領域に入り込むことになる」

──研究者ではなく、実践者をめざしていたといいますと、中沢さんは何をやりたかったのですか。
きっと未来の思想を切り拓きたかったんですね(笑)。

中沢新一が学生時代や若かった頃のことを語るところにジンとする。反省や俯瞰。それでもちゃんと自負もある。どちらに進むべきか。こっちで良かったんだ、という。