大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

「国境は関係ない。宇宙飛行士になりたいだけ」と、小学生のおんなの子たち

ビームマシンで連れ戻せ テレポーテーション大作戦(字幕版)
原題は「SPUTNIK」、ソ連人工衛星スプートニクだ。地上は東西冷戦によって分かたれ、示威のためには宇宙を目ざす必要があった。
スプートニク1号の打ち上げ成功は1957年。アメリカによるアポロ11号の月面着陸が1969年。それから徐徐に、仮想敵国を意識した宇宙開発競争は下火になっていく。
かがやかしい象徴としての人工衛星、探査機や激化する戦争(2013)。せかいは目まぐるしくうごくが、ドイツ民主共和国はとりのこされていた。
『ビームマシンで連れ戻せ テレポーテーション大作戦』。舞台は1989年、ベルリンの壁崩壊前夜。反政府的な言動や越境は逮捕、射殺ということもあったが、権力の側はすでに無気力、事なかれ主義に陥ってもいる。
本作は、児童文学をおもわせる優しさで大人たちを戯画化しつつところどころシリアスに、自由というものをえがいている。
西ドイツに行く者、亡命をかんがえる者、それぞれの人生ではあるが思いとどまってほしいとねがう者、さまざま。
主人公である子どもたちの自由は、西や東で変わるものではない。あるいは、変わるということをまだ判っていない。だから叔父が西ドイツに行ってしまって連れ戻したいとかんがえる。
かつて叔父とつくっていたのは人工衛星。そうだ! その知識を活かしてわたしたちはビーム式の転送装置をつくろう! とスタートレックを好きな少女はひらめいた。
ちいさな対立をいくつも生みながら少女たちは進んでいく。装置の完成。

そして突然に国境がなくなったのだ。


映画の最後にながれるRENFTの『APFELTRAUM』。初めて知る。訳出されていた部分を、備忘のために。

リンゴの木の下で眠った
たわわに実るリンゴの木
そして憂うつなリンゴの夢を見た
すべてのリンゴに顔があり
悲しげに泣いていた
リンゴの木はこちらに幹を傾けてきた
体が重すぎるから私を揺すってください
夢を見るのはその後でもいいはず


枝に1羽の鳥がとまった
その名はゴールドマリー
彼女はこう話しかけてきた
この木は近くの小屋に住む老人のものです
具合がよくない彼を助けてあげなさい
さあ起きなさい
夢から覚めるのです
老人と彼の木を助けてあげなさい