大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

「舞台上では、嘘をついてるつもりも、正直なことを話しているつもりもない。ただ、この舞台上で起こっていることだけが本当のことだと思ってる」  青柳いづみ

ことばの恐竜 最果タヒ対談集

松本隆 みんな、かき回しちゃうんだ、自分のことを。そうすると汚れから何から全部出ちゃう。だから一回放っとくわけ。例えば恋愛してさ、ぐじゃぐじゃになって、それ書いたら面白いわけ。だけどそうじゃなくて一回放置して、半年ぐらいしてから見ると、汚いものが下に沈んで、上にきれいな上澄みだけが残って、それを掬ってあげればね、みんなが「いい」って言う(笑)。

最果タヒ対談集『ことばの恐竜 最果タヒ対談集』。そのあいては松本隆大森靖子二階堂ふみ、青柳いづみ、谷川俊太郎穂村弘石黒正数、志磨遼平。
詩人・最果タヒはすでにひとつの完成をみているし、好奇心のかたまりというタイプでもないので、対談がところどころ噛みあっていない。首肯しつつ真反対の返しをしたり。だから、かなりしっかり読んだ。
「実はわたし、英語が嫌いなんです」と言う最果タヒに、二階堂ふみが「わたしは英語をしゃべるようになってから言葉の可能性が広がりました」と。「英語の良さはシンプルなところで、ときめいた瞬間にその良さを正確に伝えられる。(……)慎ましさと大胆さの共存って、日本語だけでもできないし、英語だけでもできないから、両方使えたらいいのになって思いますね」
みんな、おもしろい。最果と年のちかい対談相手は、それぞれにゆがみを告白する。青柳いづみは「以前は、『寝たり食べたりしている場合じゃない!』って思ってたんですけど、一回喉を壊して全然声が出なくなっちゃった後は、そんなことしてる場合じゃないなと。そのときまでは自分のことをサイボーグだと思ってたんですね」。

谷川俊太郎 おれ、この歳になった今でも、取材の人が「今恋人はいるんですか」とか訊くんだよ(笑)。なんでそんなことより作品に関心もってくれないんだよって。やっぱり人間はみんな週刊誌的な側面がどこかあるんだね。

穂村弘 やっぱり若いときは病気もないし財産もないし、地位も名誉もないし経験もなくて、あるのは未来のまぼろしだけ。まぼろししかなければそれはもう真実っていうか、唯一無二なわけだよね。だけど自分もおじさんになり、おじいさんになって、青春のまぼろしが失われたあと、どうやって人生の重力みたいなものを言葉に載せるのか、僕はずっとわからないままきている。