大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

箏 森川浩恵

筝-koto- CHU-略
『吉祥寺寄席』行く。「早春を祝う、情熱的な箏の音色と落語!」。
至近の常連をあいてにした地域寄席のひとつ吉祥寺寄席は前座、二つ目、ゲスト、真打という律儀な構成。キャスティングに秀でているが、今回のゲストはとくべつ凄かった。箏の森川浩恵さん。
サラブレッドにして反骨の、個性いちじるしいかたで、天命に衝き動かされているのではないか。
地域寄席というところは、かんたんに言うと平均年齢が高くて、目も肥えている。ちょっとやそっとではおどろかないひとたちのあつまりである。そこに森川浩恵さん登場し、一曲終わったあとに歓声と拍手が起こった。次元のちがうものと出遇った感覚。それをある程度まとまった人数で共有できたのは、佳かった。
箏(こと)のよくある誤解に「一音しかでないリズム楽器」があると森川さんは仰言った。ソロでも耳目をひくことのできる演奏。モンゴルの大草原をイメージした「駿馬」はさまざまな情景を想起させつつ、初めて聴くのにしっかりと起承転結がわかる。
兵庫のかただから、関東ではなかなか聴く機会がない。これからマメにチェックしようとおもった次第。


落語は春風亭一猿「雑俳」、春風亭三朝「あくび指南」、五街道雲助「幾代餅」。
「幾代餅」(「紺屋高尾」と同工)には爛熟と普遍性がある。おとこが、花魁の錦絵に恋をする。どんな花魁も商品なのだからカネさえ貯めれば会うことができると精だして働く。おとこのまごころに触れた花魁。おとこと結婚する。
二次元に恋するおとこも、あいての馬鹿正直を優しさと勘違いするおんなも、初心(うぶ)と言うほかない。だから切なく、美しい。