大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

〈ま、たぶん、生きてることなんてフリースローみたいなもんだ。バスケットしに高校行ってる俺にしたって、工場に勤めてるタカオにしたって。/はいるかもしれないし、はずれるかもしれない。で、これが大切なんだろうけど、はいんなくったって、いいんだ〉  「セカンド・ショット」

セカンド・ショット (角川文庫)
川島誠の短編集『セカンド・ショット (角川文庫)』。収録されているのは「サドゥン・デス」「田舎生活(カントリー・ライフ)」「電話がなっている」「今朝、ぼくは新聞を読んだ」「セカンド・ショット」「悲しみの池、歓びの波」「ぼく、歯医者になんかならないよ」「セビージャ」「消える。」の九編。処女作品集からデビュー作を除いたところへ「サドゥン・デス」「セカンド・ショット」、「今朝、ぼくは新聞を読んだ」「セビージャ」「消える。」を加えたかたち。
「サドゥン・デス」「セカンド・ショット」は川島誠の代表作『800』に、「今朝、ぼくは新聞を読んだ」は「ぼく、歯医者になんかならないよ」に呼応するのだろう。


「サドゥン・デス」は中学生の夏物語。〈県の優勝候補にあげられるくらい評価の高かった俺たちの中学のサッカー部は、なんと地区予選の決勝で敗退しました〉
それでみんなで町工場でバイトする。

俺、学校よりか工場に向いてるのかな。

男子の一人称でデリカシーのないことをすぱすぱ書いていくなかで、ときどきすごいのがでてくる。学生のときの有能無能がそのまま社会に巣立つわけではない。
「電話がなっている」は、学力が将来を決定的に左右するディストピアSF。最底辺のにんげんは食肉になるのだ。ガールフレンドも。
川島誠の小説はドロップアウトをそそのかす。いや、ちがう。くるしまずに生きることのできるばしょをみつけられるよう、語りかけてくる。