『風と共に去りぬ』や『ゴッドファーザー』は当然として、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』にところどころ似ていることにおどろいた。『愛と精霊の家』(1993)、ビレ・アウグスト監督。製作国はドイツ、デンマーク、ポルトガル。
出演はメリル・ストリープ、グレン・クローズ、ジェレミー・アイアンズ、ウィノナ・ライダー、アントニオ・バンデラス、ヴィンセント・ギャロなど。イサベル・アジェンデのマジカルな小説が原作で、野心的な男エステバン・トルエバの一生をその婚約者や妻、娘のまなざしによってかたちある物語におさめる。
2時間半の映画とはいえかなりの省略がある。登場人物のかんがえていることが科白によって明らかにされるばめんはすくない。
若き日のエステバン(ジェレミー・アイアンズ)はローザ(テリー・ポロ)に求婚する。そのときからローザの妹クララはエステバンのことを好きだった。だから、スーパーナチュラルな力をもつクララが姉の死を予感し現実のものとなったとき悲しみばかりでなく罪の意識から周囲と口をきかなくなる。ローザは父の代わりに毒殺される。
エステバンはおおきくなったクララ(メリル・ストリープ)と結婚する。エステバンの姉フェルラ(グレン・クローズ)は、はじめのうちこそ警戒していたものの、クララに魅了されてしまう。クララとフェルラは精神的な同性愛といってもいい関係になる。クララの妊娠後、とくに。
男と女の関係、また仕事と家の関係というもの。そのズレは広がっていくばかり。エステバンはフェルラが気に入らない。クララのことも許せない。娘のブランカ(ウィノナ・ライダー)が小作人の息子ペドロ(アントニオ・バンデラス)と恋仲であるのも怒りの種である。ペドロとクララは反体制の社会主義活動でエステバンの築いた富を否定しようとしてもいる。
家族を裁くほどの潔癖さがエステバンにあるかというとそれは怪しい。娼婦とも寝るし、じぶんの農園ではたらく女を犯した。その女は息子(ヴィンセント・ギャロ)に父とおなじエステバンの名をつけた。
婚外子のエステバン・ガルシアはたびたび金をせびりに来る。ブランカに色目を使う。エステバン・ガルシアの金銭や権力、色情はすべて憎しみに由来する。軍人になりたいと言い、父であるエステバンに金をだしてもらうのだが、政変が起こり、軍人として力をもったときには父を無下にし、義理の妹を左翼活動家として拷問するのである。
そういった混乱にもいずれ終わりが訪れる。ブランカは亡き母の日記を読みながら、ペドロとのあいだに生まれた娘に愛情を注ぐことがじぶんの人生であり、さまざまなこととのある種の和解なのだとかんじるわけだ。
要約してしまったが。たとえばそういう映画でもある。