大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

「女の着物は きれいだなァ…」

百と卍 (onBLUEコミックス)
漫画版『しゃばけ』アンソロジーで知った紗久楽さわ。BL『百と卍 (onBLUEコミックス)』、しっかり江戸の風俗で、楽しい。
同性愛にあこがれて、衆道として文化的にみとめられていたのが江戸時代、だからテーマにえらびましたというのじゃない。紗久楽さわが江戸に通暁している。その表現のひとつとしてBLがあったわけ。
時代と、人物のコントラストは第一話からはっきりしている。兄貴分の卍は「江戸(ここ)にいりゃ人生で三度は焼け出されるってもンよ」と火事に動じない。陰間として働いていた百は「ももの居た見世じゃ皆でお手てつないで逃げンだ」と逃げたくって仕様がない。
卍が「商売物(しょうべェモン)が火事に乗じて消えちゃァ大損だものな」と冷ややか。


画も巧い。平板で見通しが良く情報量の多い、つまるところ奥行の発生する江戸の描きかた。科白は最小限。人情はかしこくドライ。そういう都会に放りこまれた百がどこまでも無垢でウェットで相方の卍がじんわり引きずりこまれるかたち。
付き合うことで変わっていく生命のふしぎなやわらかさである。

お百(もも)曰く
俺たちは雨の日に
出逢ったそうだが


俺に言わせりゃ
あの日は


虹の出た日だ