大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

〈地球にうまれた生き物は、いつか絶滅する運命。むしろ、生き残ることのほうが、例外なのです〉

わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑
タイトルが良い。雑学系の、なんとなくヒキをツクる見世物小屋的胡散臭さではなく、着地しているタイトル。『わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』。
章立てで、さまざまな絶滅がならんだあとに「絶滅しそうで、してない」。ウッと胸がつまった。『わけあって絶滅しました。』という秀逸なタイトルをつけておいて、そこから引っくりかえしてみせる。感動的な、王道のつくりなのだった。
「切り離して読める!」「3分でサクッとわかる」「絶滅全史」という附録もイイ。通読させる力をもったうえで、要約も容認する。ダイジェストは、ある種のユーモアだとおもう。


ダイヤモンド社のまえで、この本を知った。〈やさしすぎて絶滅〉、ステラーカイギュウのページが紹介されていた。〈ぼくは北極に近い海で2000頭のなかまとくらしていたんだ。あのころは幸せだったなあ〉
つづいてドードー、〈のろますぎて絶滅〉。ギガントピテクスが〈パンダに負けて絶滅〉。文章もイラストも誤解を恐れず誇張が行き届いていて、楽しい。
丸山貴史、著。絵はサトウマサノリ、ウエタケヨーコ、海道建太、なすみそいため。監修に今泉忠明


恐竜が滅んだのは大隕石衝突による氷河期到来と、ざっくり理解していたけれど、肉食恐竜で最大クラスのスピノサウルスは〈川から出られなくて絶滅〉。なるほど。魚をたべる。背なかに帆がある。変温動物。巨大。
陸上で捕食するのはにがてで、「小さい恐竜とかが水飲みにこないかな〜」「おれたちが丸見えなのに、ノコノコ来るやついないっしょ……」。説明の〈陸上を歩いてほかの川に移動することがむずかしく〉にもうなづく。
どの章にも想像力をやしなうヒントがある。
先カンブリア時代末エディアカラ紀の、捕食することなく光合成などで生きていた種は〈目や口やヒレをもつハンターがあらわれると、食べつくされてしまった〉(ディッキンソニア)。おおきくいえば、そういうことだ。


アンモナイト三葉虫の多様な変異に触れた幼時、興味ぶかくも空恐ろしくかんじたものだ。これらの変異はかつて奇形と説明された。
ユニークであることにはリスクしかないようにおもえた。しかし何例も化石がみつかって、ランダムに発生したものでないとわかった。
アンモナイトのことをわすれて大人になったわけだけど、アンモナイトがずっと胸にのこっていても生きられるのかもしれない。
「異常巻き」だけが絶滅したのではない。みな絶滅したのだ。