イシノアヤらしからぬ表紙の『アイ・ドント・クライ (上) 【電子限定おまけ+アマゾン限定特典付き】 (バーズコミックス ルチルコレクション)』。たおやかな、男子アイドル然とした顔。ほかの人物たちとは描きかたが異なる。それで華がある。
アイドルも、バンドも扱う芸能事務所で、姫野亜樹はジリジリしている。自身はドラマに出たりもしているが、所属するアイドルグループそのものはパッとしない。メンバーのモチベーションは低い。マネージャーが若手に代わった。《敗戦処理》だと、姫野は言う。
誰が
解散って言った?
安心しな
俺にそのつもりは
ねえよ
主人公が、グラグラしている。けれど支えてくれるひとがいる。この関係性は熱い。
グラグラしているぶんだけ、短絡的になる。他に厳しくもなる。姫野はときどき過激だが、マネージャーの笠原は柔軟な策士。
「笠原さんて変わってますね」
「──…芸能人に言われる程じゃーないと思いますよー」
アイドルグループは、解散。笠原のアドバイスで、姫野は移籍。ふたりの道は分かれることに。
登場する大人たちには分別もあるし、展開も好い。逢坂みえこ『ベル・エポック』などおもいだしながら、読んだ。
もちろんイシノアヤの『union (バーズコミックス ルチルコレクション)』も想起し、読みかえす。