楽園王、長堀博士演出によるウジェーヌ・イヨネスコ『授業』観る。2004年の利賀演出家コンクールで優秀演出家賞を受賞し、再演をかさねている作品。
ダブルキャストのTEAM.Aを観劇した。教授は岩澤繭、マリーに小林奈保子。生徒1 日野あかり、生徒2 杉村誠子。
この教授は、じぶんの正しさに酔える権力者である。あいてを下に見ている。生徒は生徒で、勉強をしなければいけないと、おもいこまされている。
たいていの演出家はこの教授に男性を、生徒には女性をあてる。そうすると、社会における暴力や差別、男と女の問題が浮き彫りになる。
教育熱心で、興奮のあまりかならず生徒をころしてしまう教授の話だ。それがすぐに露見しないのは共犯者のマリー(女中、である)がいるから。
教授のレッスンはナンセンスで笑えるものでもあるのだけれど、男の俳優が演ればいかにも残忍。長堀博士は、教授に女性をキャスティングする。そのためずいぶんやわらかくなる。フェミニズムやジェンダーが消える代わりに、暴力や差別が政治にまつわるものとして顕になる。
この部屋の外を時折アメリカ兵がとおるようなのだ。靴音、国旗の演出でそれと判る。
戦下である。死体をまえにうろたえる教授に、ナチスの腕章をつければだれも不審がらないとマリーが言う。敗色は濃くなりつつあり、教授の権力は失われそうだ。だからかれはすぐに常軌を逸してしまう。
マリーはちからづよく、生徒2は表情が豊かだった。