大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

「忘れっぽいことは問題じゃないんです。忘れることが問題なんです」

ハナレイ・ベイ

2018年の映画『ハナレイ・ベイ』。吉田羊、佐野玲於村上虹郎どのひとも活躍めざましく、そのためにずいぶん昔の映画のような印象もある。

原作は村上春樹東京奇譚集』のなかの一編。やや説明的なところを俳優にゆだねて映画は佳品となっている。脚本・監督は松永大司

人物の、登場量のバランスが良い。あ、ここで栗原類か、というふうな物語を見るなかでのおどろき。

 

親に感謝する必要をかんじていない息子に、佐野玲於。劇中ではモテない、モテないと年上の異性であるサチ(吉田羊)からばかにされるけれども、観ているかぎりはかなりモテそうな、優しい嘘つきが村上虹郎。サチは「おばさん」「おばさん」と高橋(村上虹郎)から呼ばれることで悪態をつき合っていく関係と見なしたのかもしれない。男性嫌悪、人間不信の気味もある。それでジャッジがうまくない。

「おばさん何者なんですか?」
「……夢をもってたけど挫折して、子どもができて結婚して、夫がドラッグキメながらほかの女とセックスしてるあいだにしんじゃって、しんだ保険金でピアノバーをひらいて、子どもを育てるために必死に働いて、その子どもが……。ま、そんなかんじのひと?」

サチはシニカルである。

高橋は、サチのために喧嘩をするタイプのおとこの子だ。

アメリカ人はつよかったっす。しぬかとおもった」
「あんたたちほんと何もわかってない平和ボケしてる日本人のガキだね」
「わかってないのはおばさんだから」