映画『五億円のじんせい』(2019)観る。主演は望月歩。『真夏の少年』で瀬名悟(佐藤龍我)の兄だった。世間になじまぬ透明な佇まいが印象的で、それは素なのか演技なのかと。惹きつけられた。
五億円の寄付によって小児期の難病を克服した少年が、その物語と家族によってがんじがらめになっている。五億円を稼ぎださなくてはじぶんが生きることもしぬこともできないとおもいつめ、家出する。
ホームレス(平田満)のところで一宿一飯したのを皮切りに、さまざまなアルバイトを遍歴する。グレーゾーンを垣間見もする。
道徳的にありふれた、家に帰るだけの映画で終わらなかった。少年のうちに、ちゃんと五億円を得るのである。
監督、文晟豪(ムン・ソンホ)。脚本は蛭田直美(なにわ男子の新ドラマ『メンズ校』が控えている)。
「どうして優しくしてくれるんですか? 僕、優しくしてもらってばっかり」
「優しい奴と、優しくない奴がいるんじゃないからね。優しくしてやりたくなる奴と、そうじゃない奴がいる。きみは、優しくされて生き残るタイプ。おめでとう」
「……もう会えないんですか?」
「会いたい?」
「会いたいです」
「だったら、今度は自力で辿り着きな」
ピンハネしながらも庇護してくれる丹波(森岡龍)との関係が精神的なBLだ。あるいはDKリフレの客(芦那すみれ)とのなにもない一期一会にもみられるけれど、十代(主人公)の引力は危うい。