大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

『年下彼氏』から、モラル脚本回。

創作論、というか実作者の志を科白することに振り切った『真夏の少年』第5話が凄くて、この回の脚本を担当したモラルによる『年下彼氏』をあらためて周回するなど。

 

『年下彼氏』第2話は「ちゃん付けで呼びたくて」(小島健主演。監督小野浩司)。学校からでてくる生徒たちの画ではじまり、放送部のアナウンス。ヒロインによる「まもなく、下校の時刻です。生徒の皆さんは、帰宅の準備をはじめましょう」──。

ヒロインの声と顔。物語の中心にいるのがだれかはっきりさせたうえで、小島健にピンスポットを当てる。そしてみじかいモノローグ。

わが放送部の美雪先輩。

俺は彼女にひそかな恋心をいだいている。が、しかし……。

きびきびして巧い。「高校生の俺にとって、一年先輩の壁はあまりに高く、恋愛どころか、ふつうに話すことさえ夢のまた夢だった」

ノローグのいくつかをテロップや単語カードで明示する演出も、物語のなかでラジオドラマをつくることになってゾンビを登場させるのも可愛く、恋の成就をえがくのではなく、タメ口がきけるようになるささやかな着地も佳い。

 

第4話は「論理的な彼女」(福本大晴主演。監督植田尚)。この回は斉木しげるの出演と、福本大晴の色気でつよく印象にのこっている。冒頭の台詞はやはりヒロインの(マイクをとおした)ゼミの発表、「えー最後になりますが、私自身も今後、ミクロ経済的にものごとのメリットとデメリットをより深く考え、リスクのない人生を歩んでいきたいと思います」。

論理にパッションは勝てるのか? という話。告白するも「でも私が年下の男性と付き合うメリットってあるのかな?」と。

皆川くんと付き合う時間は、オペラよりも上質なのかな。

 

第6話、「優等生の苦悩」(西村拓哉主演。監督小野浩司)。臨時担任への恋。しかし優等生の主人公よりも、一寸不良のグループのほうが、先生のウケがいいようにみえる。

「『いいはわるい。わるいはいい』──そんなパラドックスが、この世に存在していいのか?」

優等生が、愛をもとめて堕ちる。変身譚である。

第8話は「笑いの女神」(草間リチャード敬太主演。監督小野浩司)。こちらも変身譚。学園物を脱出して、上京した漫才師をえがく。

公園でのネタ披露に、たった一人観にきてくれていた女性。主人公は惚れてしまうが、女性には彼氏がいた。

彼氏と別れたタイミングで主人公は告白するけれど、「これからもファンでいたいっていうか」。

「なんやねんそれ。結局俺は、お笑い要員てことかよ。都合のええことばっか言わんといてくれ」

恋物語としてはそういう憤懣も大いにありだが、芸人としてはちがう。「俺はなにをやってんねん。女の子一人元気にできんで、なにが漫才の頂点や」と独白する。公園で坐ったままの彼女のまえに、バイト終わりの相方ともどり、漫才をする。

モテたくてお笑い、というところから一段上のつよさへ。

 

第11話「着せ替え彼氏」(大橋和也主演。監督植田尚)。デートのときにドクロモチーフばかり身につけてくる幸一。語り手はあいての菜々子だ。

菜々子がデート中に小ざっぱりした服を買い与えても、つぎのデートで幸一はドクロモチーフを入れてくる。

オチは、ラッキーアイテムがドクロ。「ドクロになるまで添い遂げられます」ばかばかしくて、好い。

第15話。「オトナのオトナ大作戦」(監督倉木義典)

エリちゃん、お疲れさま(ト送信)

インターネットで出会った、顔も声も知らないエリちゃん。

(ト返信を読んで)「ジュン君こそ、お疲れ様! 今日も元気に過ごしてる??」

彼女とのやりとりは、俺にとって癒やしの時間だ。だが……

(ト返信を読む)「あ、そうそう こないだ言ってた、ご飯の件 明日とか、どう??」

(ト「勿論、いいよー!」と送信し)ついに、このときが来たか……!

 

「で、明日そのエリちゃんと、会うわけね?」と17歳のジュン(佐野晶哉)は友人から呆れ顔をされる。「なんだよ、自慢かよ」(友人役に岡﨑彪太郎、大西風雅)。

あいては23歳。そしてジュンはじぶんも23歳だと嘘の申告をしていたのだ……。

 

第17話は「アナログな夜に」(藤原丈一郎主演。監督倉木義典)。語り手は女性。年の差ありの遠距離恋愛。ヨーコを演じる阿部純子良かった。

どうしたってズレは生じる。

「ミツルにわたしの気持ちはわからないよ。だってまだ学生じゃん。……社会にでるってすっごく大変なんだよ。理屈じゃ片付かないことが、山ほどあるんだよ。それ知ってて言ってる?」

ただ、ミツルの頑張りもわかる。自省しながら修復の糸口をさぐる。ラストは十代向けというふうで、キュート。