大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

鬢付け油という天丼

『両国花錦闘士(りょうごくおしゃれりきし)』観る。作・演出、青木豪。

明治座三田光政、東宝鈴木隆介、ヴィレッヂ浅生博一による〈三銃士〉企画。相撲をあつかった漫画(いしかわじゅん『薔薇の木に薔薇の花咲く』ではない)を原作にして、果たして舞台が成立するのか──。主演の交代や、新型コロナウイルスの影響以前の難産が予想された。青木豪はどのようにまとめあげるのかという期待があった。そしてみごとな省略、誇張を堪能する。

原作・岡野玲子の繊細ながらも突き放すところのある批評的な笑いもいいけれど、演劇らしい「見世物」としての科白や演技が好かった。

肉襦袢を着た大鶴佐助がコミカルなのにリアル。声も巧くて、さいしょに安心をあたえてくれた俳優。役名は雪乃童。

対するハンサム、ソップ型の昇龍はほんとうにむずかしい役どころだ。経歴のよわさが、反抗心をはぐくんだ。親方の言うことは素直に聞けず、アンコ型へのヘイトも隠さない。孤立するから、異性に翻弄されることとなる。いつの世にもいる光り輝く若者であり、おおきく伸びるにはさまざまなものを呑まなければならない。

原嘉孝頑張った。先ず圧しかかるのは主演という重責だ。昇龍を乱暴者だがヘタレとして読みこんで、堂々と演った。終演後の深々としたお辞儀に胸を打たれた。

もっと三枚目につくって笑わせるのもアリかとおもったけど、そこは今後の活躍を追うこととして。

りょうの演技に感動し、笑いっぱなしだった。大原櫻子の雑誌記者にもセンスと技量をかんじた。二人のヒロインは、原作ほどには内面を語らない力士たちのぶんまで行動し、うたう。

紺野美沙子の母親役が愛情ぶかくおっとりとして、癒やしであった。

また、徳永ゆうき体幹やムーブに惹かれた。須藤王(ストーキング)という力士と、行司。

書いていけばキリがない抜群のキャスティングである。

 

2020年の観劇は「神様」が多く語られたようにおもう。『両国花錦闘士』も。神そのものが現れるわけではないが、祈りによって幕を閉じる。