『あんのリリック 桜木杏、俳句はじめてみました』後編。
夏川結衣演じるクリエイティブディレクター・塔矢ローズゆりのもつ温情と残酷さがいいかんじ。翻弄される昴と杏。
昴は、先輩の神谷(毎熊克哉)から「そもそもおまえは、あの子を連れ回して、どう仕事につなげようとしてたわけ?」と聞かれる。「それは……」言葉に詰まる昴。恋じゃん。しかしそれはまだ明瞭でない。
後編はハゲボウズと桜木杏の和解から。「句友」で「クルー」で「狂う」だった。
ハゲボウズ持ちの高級寿司店。寮母によれば「ギロッポンのシースーはお詫びの最高峰」でもある。大トロばかり頼む杏。
本宮鮎彦(田辺誠一)主宰のいるか句会、恋愛フラグがどんどん立つなか、鈴木鵙仁(吉田ウーロン太)が非モテの色を濃くしていく。川本すみれ(安藤ニコ)は昴と杏の関係にかるいジェラシー。
核心へ触れぬままなり冷奴
鶏卵を丸めてごらん夏のれん
アオノリュウゼツランのまえに立ち「俳句で、花を咲かせたいなあ」と呟く鵙仁と梅天(桂雀々)の掛け合いが可笑しい。「でも、咲くとしぬで。咲くとしにますて書いてあるがな」「しにましょうか」「なんで? いやや」
前編を回収していくかたちの後編。休憩ありの観劇のような心地よいゆとりが生まれた。
劇中登場した句からいくつか。
夏めきて天に決意を告ぐるべし
南風に口笛持ってゆかれけり
共学に憧れし日やメロン熟る
明易や胸の奥へと詩を追うて
こもれびに龍のまなざし秋澄めり
手を振って電車が行って虫の声
熱帯夜途中で帰る君の髪
海映ゆる君の眸の涼しさよ