『昭和歌謡大全集』(2003)。監督・篠原哲雄。脚本・大森寿美男。原作は村上龍。青年とオバサンの抗争劇。
みんなマトモでスマートなんだから、暴力に訴える奴なんかいないとおもわれていた一時期の日本。戦争や、自国民への武力行使は遠くの世界のお話だった。あるとき宗教団体が国家転覆をはかってさまざまな事件を起こしたことで日本はますます暴力と向き合えなくなり、こじらせていくのだけれど、暴力の見えないところではエロスは稚拙なものになる。あいてにいきなり突きつける。
そういう、エロスに習熟していない青年が年上の女性や男性と出会う。生きかたの手ほどきをされるというのが物語的な「成長」だけれども、『昭和歌謡大全集』で青年はオバサンをころしてしまうし、登場するオジサンは「こじらせている」のでルサンチマンのままに青年をそそのかす。
このオジサンに、原田芳雄。うごきに型のない不気味なオジサンだった。寺田農、木下ほうか、古田新太、ミッキー・カーチスも良かった。
六人の青年に松田龍平、池内博之、安藤政信、斉藤陽一郎、村田充、近藤公園。対するオバサン六人組〈ミドリ会〉は内田春菊、岸本加世子、樋口可南子、森尾由美、細川ふみえ、鈴木砂羽。
〈ミドリ会〉が賑やかで、魅力に溢れる。荒唐無稽の匂いをのこしつつリアルである。