大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

対立、断片化していく世界のこと。(それを「男」と「女」で説明すること)

シス・カンパニー公演『奇蹟 miracle one-way ticket』観る。1時間42分。

北村想によるシャーロック・ホームズパスティーシュ

人物と、場所が用意される。事件と出遭い、解決する。平易な構造を埋めていくのは衒学的あるいは雑学的な饒舌と、メタな社会批評。

ニュースで知る世界の不幸に胸を痛める老人が書いたような、図太い弱さも垣間見える。

殺人は起こらない。異常と寄り添う昭和の推理小説よりは、江戸の市井をえがいた時代物の平穏に近い。

語り手であるワトソンこと楯鉾寸心(鈴木浩介)が、シャーロックとしての記憶を失くした法水連太郎(井上芳雄)と大分県の森深くで再会する。ここはカクレキリシタンの隠れ里だという。聖痕(スティグマータ)、秋田の聖母マリアマザー・テレサの列聖などが語られる。劇のなかで、マザー・テレサについて悪く言う必要はないとおもうけれど。

長谷川博己主演のNHKドラマ『獄門島』に言及する台詞があったり、娑婆っ気の衰えぬ(活性化した?)本を、寺十吾がじつにロマンチックに演出する。俳優たちも世界を共有して好演。稽古場の雰囲気が伝わってくる。脚本を生かすのは、演出家の知性と度胸だ。

プロジェクションマッピング(同ポジ)をばんばん使う。絵や文字で長い科白の理解を助ける。

装置も綺麗だった。

瀧内公美が聖痕の女を演じて生ま生ましい。奇跡の調査員に岩男海史。大谷亮介は科学者と牧師の二役。この牧師は、かつてカトリックの神父だったとか。

井上小百合はマリモという役で、いきなり歌いだす井上芳雄のとなりでリコーダーを吹いたり、テナーサックスを演奏したりと多彩なところをみせる。