ジェームズ・ワン監督『マリグナント 狂暴な悪夢』(2021)。
さまざまな引用のなかでいちばんつよくかんじたのはウェス・クレイヴン。『エルム街の悪夢』『スクリーム』『壁の中に誰かがいる』……。襲ってくるのは人間的な身体能力と、憎悪。
スリラー、サスペンス要素ばかりがウェス・クレイヴンなのではない。アメリカの、夢のような青春の匂いがするのはヒロイン(アナベル・ウォーリス)の妹シドニー(マディー・ハッソン)のためだ。シドニーは女優をしている。衣装のままヒロインの入院先に駆けつけたりする。
シドニーは霊視や超能力をけっこう信じているが、刑事に一蹴されてしまう。渦中のヒロインの判断でなく、社会人としてはまだ未熟な妹の見立てだから、この物語に超自然のものはないとみていい。この辺りの、犯人やジャンルを絞りこんでいく脚本が親切だし巧い。
シアトルの埋め立てられた地下の街というのも装置として色っぽい。