大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

〈「変わりものはすぐ目につくんだ。もし自然状態で生まれたらたちまちほかの魚にとらえられて生残ることはできないだろうね」/「うむ、なるほど。それで平均値が生残るってわけか」〉  畑正憲「目玉の旅行」

ムツゴロウの博物志 (続) (文春文庫) 畑正憲ムツゴロウの博物志 (続) (文春文庫)』。
おおきくなる話。

爬虫類が大きくなる可能性を絶えず持っているという学説は魅力的である。たまたま病気をまぬがれた大蛇が迷い出て、原子力潜水艦を丸呑みにしたら愉快である。
大きくならないのは、寄生虫がはびこるのが一因である。死んだニシキヘビなどを解剖してみると、白い虫が腸管の中にうじゃうじゃ増え、なかには胃の壁を突破っているものまである。


ヒドラの話。

「ちょうどいいや、買ってきたというイトミミズを入れてごらん」
「ミミズだって? 冗談じゃないよ」
弟は目を丸くして抗議した。
ヒドラの五倍も六倍も……いや十倍近くあるんだぜ。逆にヒドラが食われてしまう。いやだよ」
「まあ、いいから入れてごらん。心配なら、何匹かヒドラを別の容器に入れて、ミミズを入れよう」
私たちは、来客用の小皿の中にミミズを入れ、ピペットヒドラを入れた。
一分、そしてまた一分。
何事も起こらない。イトミミズは、気持よさそうにはいまわっている。
異変が起きたのは、そろそろ観察に飽きてタバコがほしくなってきたときであった。ミミズが運動をやめ、苦しげにローリングしている。
ルーペでよく見ると、その脇腹にヒドラがくっついていた。毒のある刺をせいいっぱい伸ばして、しっかりからみついている。
一体、どうしようというのだろう。
少しオーバーではあるが、ミミズにしがみついているヒドラは、電柱にまきついているアオダイショウを思わせた。それほど大きさが違った。いくらなんでものみこむことはできないだろう。
ところがである。ミミズのちょうど中央のあたりへ口をつけて、ヒドラがひくひく動きはじめた。そして、ミミズを折曲げるようにして、胃の腑に収めはじめたのである。
そして、約一時間かかって、とうとうのみこんでしまった。