大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

矛盾ではない。強さと弱さを併せ持つ人間たちの正直なぶつかりあい。

1995年、椿組プロデュースで上演されたとき、この作品は10年前に亡くなった友人Tちゃんに捧ぐ、という副題が付いていた。Tとは椿組の座長外波山文明さんの親友たこ八郎さんのことである。ボクシングの元日本フライ級王者であり、引退後コメディアンとして活躍し、誰からも好かれたあのたこちゃんである。

 

    水谷龍二

オフィスリバープロデュース『お目出たい人』観る。90分。作・演出、水谷龍二

渋くて魅力的なキャスティングだからすぐ手配した。渋川清彦、李丹、崔哲浩、那須凛、川手淳平、渡辺哲。どこへ連れて行かれるのやら。

 

初めましての人物たちがあつめられての密室劇。話題の中心となるのは舞台下手にあるお棺だ。場所はどこかの劇団の稽古場でいかにも不憫な故人だけれど、若年性の悲劇というふうではない。単純な喜劇でもない。話が進むに従って泣き笑いの回顧となる。

さいしょに現れたのはドキュメンタリー番組のテレビのディレクター・篠原(渋川清彦)。

篠原同様、だれかに呼ばれてやってくるひとたち。寿司職人の野口(川手淳平)に、「ヤクザ」「エロ」を柱とする週刊誌編集者・小松(那須凛)、禁酒会の八坂(渡辺哲)、一見おとなしい金子(崔哲浩)。

みな故人とはすこし疎遠になっていた。それでも呼ばれなかったひとたちに比べてずっと近いところにいた。

かれらをあつめたのは雀荘を経営するカタコトの日本語の中島(李丹)。テキパキと出来事を整理し、性格も個性的で登場人物としても俳優としても場を支配した。中島にはどうかんがえても裏がある。

中島の怪しさとは別に、故人は夜の公園でしんだのだった。ホームレスのような格好をしていて、喧嘩に巻きこまれたらしいのだが……。

 

いくつかの話題を並走させつつまとめあげる水谷龍二の脚本が佳い。さいごにおとずれる出棺の場面、上手袖まで運ばずに舞台中央ストップモーションというのが痺れた。美しく、そして前向きだった。