大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

2020-01-01から1年間の記事一覧

鬢付け油という天丼

『両国花錦闘士(りょうごくおしゃれりきし)』観る。作・演出、青木豪。 明治座三田光政、東宝鈴木隆介、ヴィレッヂ浅生博一による〈三銃士〉企画。相撲をあつかった漫画(いしかわじゅん『薔薇の木に薔薇の花咲く』ではない)を原作にして、果たして舞台が…

〈私は電話を切りながら、やはり慌てて駈けつけるのがふつうだろうと考えた。だけど私はもうその前から父は死んだつもりになっていたので、素直に慌てたりすることができなかった〉

〈最後に目を見合わせたのは今年のはじめで、もう戦後三十年になっていた。私は久し振りにその顔を見て、ああこれはもうだいぶ死んだなと思わされた。父の顔もこちらをじっと見つめながら、もうだいぶ死んだよといっているようだった〉 港が父の仕事場だった…

ある君主論

『愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸』観る。扉座「10knocks その扉を叩き続けろ」の第8夜。初演は、1991年。 横内謙介がこの戯曲を執筆しているとき、世界は湾岸戦争だった。今回のプログラムには中東へ単身乗りこんだアントニオ猪木議員のこと、公…

ブロードウェイでも観たいとおもった。オリジナルの濃くて、派手なやつを。

大野拓朗が見たくて、シアターオーブの『プロデューサーズ』に行く。甘やかな声と顔をもち、長身なのにどこか頼りないという魅力的な俳優だ。これからどんどん伸びていくのだろうと、テレビドラマ『ベビーシッター・ギン!』の善戦をみていたら、ホリプロを…

役者の無垢で押し通すフシもあるが、良い舞台

ハイバイ『投げられやすい石』観る。舞台にでてきた俳優・山脇辰哉が観劇前の注意事項を語り、「始めます。2年前です」と話に入る。さいしょのばめんは青春、才能、イケイケの主要人物たち。 「天才」の佐藤(岩男海史)、「凡人」の山田(山脇辰哉)。佐藤…

「俺は今泣いてるぞ、とか、笑ってるぞ、とかいうのが芝居だと思う」  横内謙介

関容子によるインタビュー『舞台の神に愛される男たち』(2012)。連載は月刊「浄土」。 目当ては横内謙介だったが、白井晃も載っていた。 でてくるのは柄本明、笹野高史、すまけい、平幹二朗、山崎努、加藤武、笈田ヨシ、加藤健一、坂東三津五郎、白井晃、…

横内謙介と、スーパー歌舞伎

2001年の書籍『夢みるちから スーパー歌舞伎という未来』。三代目市川猿之助と横内謙介(劇団扉座)による対談と、戯曲『新・三国志』が収められている。 つぎの作品『新・三国志Ⅱ─孔明編─』を控えての出版だった。 20年まえの本である。三代目市川猿之助は…

〈ロンドンの緯度は樺太に近いのに、花は早い〉

養老孟司『骸骨巡礼─イタリア・ポルトガル・フランス編─』。〈今度は南欧である。どうしてこんなこと、始めちゃったのかなあ。自分でもよくわからない。人生と同じで、旅はひたすら続く〉 仕事をまとめにいくよりも、継続的ななにかをもっていただくほうが、…

「大学を引退して何年にもなるし、思い残すことは虫のことだけ。それなら、まだ体が動くうちにウィーンに行っておくか」  養老孟司

「どこにも書いていないから、自分でやるしかない。学問とは、そういうものだろう」 養老孟司『身体巡礼─ドイツ・オーストリア・チェコ編─』。中欧の墓をたずねる旅。 養老が若いころから関心をもっていたのは、ハプスブルク家の心臓埋葬。心臓と、その他の…

「相葉くんと料理してます!」

さすが相葉くんです! さすが相葉くん! といつもよりもずっと上ずった声で褒めちぎる佐藤龍我。佐藤の崇敬する相葉雅紀が「きょうは、おうちでできますから」と言ったから。言ったから。 『相葉マナブ』「マナブ! ご当地うま辛麺!!」の回。何度も観てる…

『年下彼氏』から、モラル脚本回。

創作論、というか実作者の志を科白することに振り切った『真夏の少年』第5話が凄くて、この回の脚本を担当したモラルによる『年下彼氏』をあらためて周回するなど。 『年下彼氏』第2話は「ちゃん付けで呼びたくて」(小島健主演。監督小野浩司)。学校からで…

小道具として『銀河鉄道の夜』『ワンピース』

映画『五億円のじんせい』(2019)観る。主演は望月歩。『真夏の少年』で瀬名悟(佐藤龍我)の兄だった。世間になじまぬ透明な佇まいが印象的で、それは素なのか演技なのかと。惹きつけられた。 五億円の寄付によって小児期の難病を克服した少年が、その物語…

〈思い浮べれば思い浮べるほど、混乱したシインがシインに重り、雑沓した光景が光景に重って、乱れて、絡みついて、こんがらかって、何が何だかわからないような形になった〉

こうしてこの筆を執って見ようと思うまでに、既に一月半以上の月日が経った。その間にはいろいろなことがあった。それに付随して起った甘粕事件もあれば、暴動殺人の亀戸事件もあった。その時分はまだ暑かったのに、蚊がいたのに、虫が鳴いていたのに、今で…

きっとだれもが偽善者で、メンヘラ。

『来る』(2018)、原作は澤村伊智(『ぼぎわんが、来る』)。監督、中島哲也。脚本は共同で中島哲也と門間宣裕、そして岩井秀人。リアリティ凄く、人物がくっきりとしている。「わかんねえす」と言ってる高梨(太賀)と「あたしばかだから」と口にする比嘉…

「来ないで。もう誰も信じない」

映画『サイレン FORBIDDEN SIREN』(2006)。監督・堤幸彦。 原作はホラーゲームだけれど、土俗的な部分もある怪獣映画だとおもったほうが、観易い。じわじわと、それでいて急展開する。ここでの恐怖は関係性や距離に属するものでない。空気である。 出演に…

不可解な恐怖は欠いていた

製作サム・ライミ、監督アレクサンドル・アジャ。愛着ある名だがどちらもスケールダウンしつつあり、『クロール 凶暴水域』(2019)も浸水した一軒家のなかでワニと戦う小じんまりしたもの。予告編ではわくわくできたんだけど。 ストーリーには挫折と和解。…

「この銀メダル、きみのだろ」「ちがうよ。だって、捨てたんだもの」

2013年の映画『君に泳げ!』。「国民的弟」であるウサン(イ・ジョンソク)と、天才肌のウォニル(ソ・イングク)。ウォニルはふざけてばかりいるが、そこに見え隠れするのは陰のある物語。 少年期のウォニルは金メダルだった。ウサンは銀メダル。時経て二人…

「忘れっぽいことは問題じゃないんです。忘れることが問題なんです」

2018年の映画『ハナレイ・ベイ』。吉田羊、佐野玲於、村上虹郎どのひとも活躍めざましく、そのためにずいぶん昔の映画のような印象もある。 原作は村上春樹『東京奇譚集』のなかの一編。やや説明的なところを俳優にゆだねて映画は佳品となっている。脚本・監…

根本豊による『五月の鷹』。以来の、

夢精して目が覚めた。万有引力こわい。春風亭一之輔の『鼠穴』(「落語ディーパー」)聴いて、スズナリに行く。席に着くと舞台では高田恵篤が首に縄を巻いていた。『鼠穴』もそんな話だ。『鼠穴』の主人公は若いが、リア王みたいなものだ。なにもかもうしな…

魔痢子「何もかも、妄想なのです」

最後に生き残った者たちは激昂し、それまでは従順で高潔だった息子が父を殺す。禁欲家は近親者たちの肛門を掘る。淫蕩な者は純粋になる。守銭奴は金貨を鷲づかみにして窓から投げ捨てる。戦争の英雄はかつて命がけで救った町を焼き払う。上品な者は着飾って…

あでやかの可能性

『ザ少年倶楽部』「夏休みだよ! フレッシュJr.スペシャル」。 美 少年が好きなのでそのバディたる織山尚大は当然見逃せぬけれど、瀧陽次朗と山井飛翔の笑顔も愛しい。 なので久保廉、小田将聖、川﨑星輝、稲葉通陽、鈴木悠仁、山井飛翔、長瀬結星、瀧陽次朗…

アンチロマンの反対なのだ

ごあいさつ 去年・一昨年と大人数の芝居をたくさんやったので、「一人でどこまでやれるか」試すため、一人芝居をやろうと考えたのが昨年末。それからあれよあれよとコロナが広まって、世の中がすっかり様変わりし、この企画も大きく変わりました。本当なら作…

真夏の少年 金の夜

予告された『ちっこいMyojo』の表紙の衝撃。2020年9月号の『Myojo』表紙は美 少年。 佐藤龍我が愛しくてならぬ。骨格、体軀がしっかりしてきたいまも「かわいい」とか「きれい」といった観念を抱えているところ。きちんとアイドルしながらも自然とはみでるお…

〈本だけが、この世のすべてではなかった。金だけが人の幸せを作るのではなかった〉  出久根達郎

私は十五歳、中学を卒業するとたった一人で上京した。昭和三十四年三月三十日、と日付を覚えているのは、翌日が私の誕生日だったからである。従って厳密には十四歳最後の日に上京したことになる。 出久根達郎『逢わばや見ばや』。エッセイふうに短く区切られ…

佐藤龍我がでてきた夢のこと

夢のなかで、その夢を、夢の図書館に入れてあげると、言われた。

カムカムミニキーナ『猿女のリレー』

さいしょのばめんは、個人書店。わけあって全焼する。大変だ。関係者の死や、失踪。えがかれるの時空を超えた「リレー」だ。 カムカムミニキーナ『猿女のリレー』。浅草九劇経由で、配信視聴した。 天照大御神の岩戸隠れ。そのまえで踊った「猿女」・俳優(…

佐藤龍我が夢にでてきた。 書く間がなくて、ここで佐藤龍我の話はできてないけど、だいぶ好きみたい。

「誰も知らぬ所で犬のように死ぬ予感に、かえって心は火と熾えた」  石田波郷

もう、行くも戻るも手遅れの、どうしようもないぬかるみ未知に踏み入れた三十歳だったのである。賭けごとや悪い遊びをしないのが、唯一の救いというぐらい。 岡崎武志 岡崎武志『ここが私の東京』。『上京する文學』の続編にあたる。 紹介されるのは佐藤泰志…

複数の夜(ふくすうのよる)

ここにも、舞台のような演出、ある。 『おっさんずラブ-in the sky-』にも『彼らを見ればわかること』にもあった。説明兼モノローグが、ピンスポットを当てられた舞台上の俳優の如きものとして、あつかわれる。 ある種の仰々しさだったり、起こりつつある事…

「信じられないものは、事実じゃないんです」

大鶴佐助・大鶴美仁音ふたり芝居『いかけしごむ』観る。有料生配信。60分。 台本は別役実。街の深いところ、どんづまり。だれも訪れないようなばしょに女がひとりいる。そこに、逃げてきた男。 「ココニスワラナイデクダサイ」という注意書や「いのちの電話…