大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

マンガ

「残る者も 一つ所におられん者もおる それだけのこっちゃ」

坂上暁仁『神田ごくら町職人ばなし』。ナレーションや説明台詞に頼らず、絵によって見せる。第1巻の前半は、「コミック乱」掲載の一話完結型。ミニ番組のくっきりとした切れ味で「桶職人」「刀鍛冶」「紺屋」「畳刺し」。畳刺し以外の職人は女性だ。ページ…

〈若い頃にお会いしていたらきっと喧嘩になったろう。そう考えると年を取るのも悪い事ではないのかもしれない〉

デビュー45周年、「夢幻紳士」シリーズは9年ぶりの刊行という刻の話題から沁みるものある。短篇という美しい形式によって養われた世界が、やわらかな奥行をみせる。 するどくなめらかな反復と螺旋。夢使いとして自他の想念に入りこむ。妖の裏を掻く。夢幻紳…

〈そこからわずか数手で形勢は非情にも傾きはじめる 将棋とは逆転のゲーム――〉

南Q太『ひらけ駒!』第3巻。 「やだ――ちょっとそこ引かないでくれる べつに若い子見に行ってるわけじゃないのよ」 「あたしは若い子 見に行ってるよ(キッパリ)」 女子アマ団体戦。おとなのチームとこどものチームが対戦する雑多。おひるごはんをたべなが…

「宮殿のことパレスっていうでしょ」「だからパレスサイドビルなのね」

南Q太『ひらけ駒!』第2巻。 「今日の棋譜 書いておいたら よかったかな〜〜 一応道場でも 相手の人に ことわったら 棋譜書いても いいんだって」 「羽生さんも 深浦さんも 小学生で 書いてた」初めての棋譜。こどもの夜の熱中。 「考えてもみろ どんな奴で…

余白がある。軽快。

南Q太『ひらけ駒!』第1巻。母と子。将棋にハマる。 天才の物語でなく、読みやすい。なにかを好きになる。その衝動の素直さ。ねむる子のまわりにひろがるたくさんの将棋の本。エッセイや絵本のような慈しみ深い描写が佳い。 子の物語だから礼儀正しいのも美…

(――夏休みの思い出はバイトと部活のフルコース! あっという間に溶けていった)

じゃのめ『黄昏アウトフォーカス overlap』。続編、番外編。「恋色ソフトフォーカス」「夜の空に光るもの」など。『黄昏アウトフォーカス』の「ドラマCDアフレコルポ」や『残像スローモーション』の「プロローグ」も。 真央と寿が夜に散歩をするだけの「夜の…

「こうやって何回も変更を重ねて 台本は出来上がるんですよ」

じゃのめ『黄昏アウトフォーカス』。高校の、映画製作部。 入寮初日 寒い春 初めまして よろしく と言った 俺の手を 取りもしないで 「…どうも」 冷たい目が 近づくな と 完全に閉じてた キャメラ担当の土屋真央。同室の大友寿がゲイで、付かず離れず、詮索…

思春期。あいてが標準でないことに困惑する。

僕が小学四年生の時、唐突に兄が性教育を始めた。 クワガタの繁殖に取り組み出した時だ。 セックスに興味を持ち始めたと思ったのだろうが大きなお世話だ。 まんだ林檎『ニューノーマル・セックス』。性教育と高校生。各話完結なので、お色気シーンが入るとド…

「試しにって どこまで?」

やまもり三香『うるわしの宵の月』第2巻。 たぶん 私は くやしかったんだと思う いつも いつの間にか 向こうのペースに はまっていて だから どんな顔をするのか見たかった なにも起こっていないはずなのに、なにも起こっていないはずなのに激動、疾風怒濤…

〈この男 王子というより ヤカラじゃないか〉

「このマンガがすごい!」から。やまもり三香『うるわしの宵の月』。第1巻。 ひょろりと伸びた体躯 やや低めの声 親ゆずりの男顔 滝口宵 高校1年 性別、女。 「王子」と呼ばれる少女と、これまた「王子」と呼ばれる少年の恋愛物語。あいてに対して突っぱっ…

〈そうだ私 いつもその2つに分けてた 老と若 世界はその2つしかないみたいに〉

松本英子のエッセイ漫画『49歳、秘湯ひとり旅』を堪能。どんなフィクションにも書き手の実体験を伴ったリアリティは入りこんでいるだろうけど、そのうえで作家が透明になろうとするエンタメ指向もあり、エッセイでそれをやれば「ただのレポ」になってしまう…

(出た…! 粉もんになると出てくる奉行おかずちゃん…!)

オトクニ『広告会社、男子寮のおかずくん』第7巻。完結。 あたたかくって、品がある。大阪弁の小説を読んでいるようで好きだった。 おまけの4コマパートにでてくる「たこせん」大阪のそれは「えびせんにたこ焼きをはさんだやつ」で、「想像どおりの味だ〜…

「怪異っていうのは『現象』と『解釈』のふたつによって成り立っているんだよ」

「解釈をするときは気をつけないといけない 下手な解釈は現象そのものを歪めることがあるから」 原作・澤村御影、漫画・相尾灯自。『准教授・高槻彰良の推察』のコミカライズ、第1巻。 民俗学には「僕が調査に行ってしまったがために 何の土地的根拠もなく…

十朱大吾 斧田駿 中村雪

曽田正人 冨山玖呂『め組の大吾 救国のオレンジ』第1巻。飛び抜けた主人公に、助演の生ま生ましい感情。読んで良かった。 “狭き門”をくぐるにはグレーやブラック、あるいはもっと不可解な色を経ることがあるかもしれない。そのときのヤバさというかアツさ。…

「これほしい!」「匂いフェチの不良か 変な子だな」

ダヨオ『ロンリープレイグラウンド(上)』。 妻子あるサディスティックな中年男やその家庭を壊そうとした雪文という、重い設定だけれど、過去のすべては悔いとして清算されるし、みんな人が好いから絶望はやってこない。 はじまりは、町中華で働く慧介。気…

「他のものを全部(ぜ───んぶ)、捨てられたらだけどね。」

「どうしちゃったのー、 ななこの弟。」 …ビリビリ、 バチバチッて… ビリビリ ビカビカ ドッカ───ン!!! ジョージ朝倉『ダンス・ダンス・ダンスール』第1巻。外で、ダンス・ダンス・ダンスール新刊告知の「足のポジション」を見て「あ、もう19巻か」とおどろ…

「あいつチャイムが鳴るとどっか行くんだ 真面目だったから 授業でも受けに行くのかな」

ジョゼ『さまようまぼろし』。 建物の取り壊しが延期されるよう、七不思議をでっちあげていく。そこへ幽冥の者が現れて、という出だしに映画『ビリケン』を連想する。 綺麗な用務員さんと、生徒会役員の「僕」と、その兄。人物が出揃ってから、淡い恋ごころ…

「心に余裕があるうちは、意味のないことをしていたいんです。きっと今しかできないから」

テレビドラマ『夢中さ、きみに。』。和山やまの原作はフラットで、真顔の陰キャたち。ドライに科白していくほうの青春だから、ドラマ化には不安もあった。が、愚直といえるほど原作に忠実な台本や、高橋文哉と坂東龍汰のみごとな演技(「うしろの二階堂」)…

鬢付け油という天丼

『両国花錦闘士(りょうごくおしゃれりきし)』観る。作・演出、青木豪。 明治座三田光政、東宝鈴木隆介、ヴィレッヂ浅生博一による〈三銃士〉企画。相撲をあつかった漫画(いしかわじゅん『薔薇の木に薔薇の花咲く』ではない)を原作にして、果たして舞台が…

複数の夜(ふくすうのよる)

ここにも、舞台のような演出、ある。 『おっさんずラブ-in the sky-』にも『彼らを見ればわかること』にもあった。説明兼モノローグが、ピンスポットを当てられた舞台上の俳優の如きものとして、あつかわれる。 ある種の仰々しさだったり、起こりつつある事…

「かわいい」のこと

遅ればせながら、和山やま『夢中さ、きみに。』。書影はずいぶんまえから気にしていたが「手塚治虫文化賞(短編賞)とりましたよ! 試し読みもできますよ!」と年下の友人から推されるかたちで、やっと。 単行本は林くんが登場する4篇と、二階堂くんがでてく…

「おまえは学ぶことを怠るな。一日一冊は本を読みなさい」

ぼくはずっと バットは野球をするためにあるんだと思っていた。 投げられたボールを、 打つためにあるんだと… でももしかしたら 逆かもしれない。 もともとは ボールじゃないものを たたいていたんじゃないか? 吉野朔実(1959−2016)による『ピリオド』第1…

(ショックやったなぁ…仕事とか夢とか 諦めなあかんこともあるんや…)

オトクニ『広告会社、男子寮のおかずくん』第5巻。 巻頭は、タニタ食堂の話で、めずらしく固有名詞がでてきたと読み進めれば、外食で肉料理をシェアした奇縁とあとがきに書かれていた。偶然を語れる明るさが佳い。 ほかにも大手を離れ、中小に転職した話や、…

「そっか…ターゲットとおれらって たった4歳違いなんだ」

オトクニ『広告会社、男子寮のおかずくん』第4巻。 競合店もなく、美味しいのに客数が減っている洋菓子屋さんと新人の営業の子。設定だけでドキドキする。 色んなイベントを1年で1周して… 客入りが落ち着いてしまった…? だとすると それは商品価格とかの…

(大事な人の大事なもの 大事な思い出なんだ 守んなきゃ──)

ゲイ友の、肉会。 三柴信司 28歳 印刷会社営業 夢中になれる 仕事に 打ち込んで 休日はジムに フットサル だけど 俺には 人には秘密の やめられないことが ひとつだけ 暴食すること! ダヨオ『肉食組曲』第1巻。気持ちが好い。理屈をこねずに、しかもひとよ…

(実況者だけど リスナーの誰にも見せない秘密の部屋を作ってしまった)  『恋の実況配信はじめました』

さかもと麻乃『恋の実況配信はじめました』。ゲームなどの動画配信、その設定ならではの密室性をさらりと入れてくる。各話きちんと見せ場もある。甘酸っぱい十代。前戯よりももっと手前でみるせかい。 実況者の「ダクト」と「あめる」がすぐにはバディになっ…

「トオルってさ 言いたいことあると黙るよな いつもすごいしゃべるのに」

行為をえがかないBLかな、とおもって読みはじめた。 絵は、写実的ではないけれど色気がある。骨が太く、おとこの膚の匂いがする。タイトルは『てだれもんら』。手練の者たちということだ。日本の料理人と、庭師。 週末に、ひとつの部屋で寝るものの、えがか…

あのドラマのまえに、これ。

原作を知らず、「LGBTと女装をあつかったテレビドラマがここにも」とあなどっていた。 かるく第1話をチェックするだけのつもりだった『ベビーシッター・ギン!』、脚本にも俳優にもユーモアと包容力があって、観ていてアタマがショートする。録画視聴を一旦停…

「美しいと感じるものはなんでも好きです」  萩尾望都

萩尾望都の『芸術新潮 2019年 07月号』と平野紫耀の『美ST』を購入。ジャニーズにもとめ、推したくなるのは萩尾望都的なキャラクターの真ッ直ぐな感情と、社会と接触したときの歪みと、身体能力に由来する挟持なのだと得心する。 なによりも先ず、萩尾望都。…

〈トリックのセオリーは 既に出尽くしている 手品業界と同じで 後は「応用」と「新素材待ち」だ〉

『マイホームヒーロー』との出会いは7巻の表紙。きれいだなー、かっこいいなーとおもって読みはじめた。 6巻までの表紙はおじさん(主人公)で、だから手に取る機会もなかった。 山川直輝・原作、朝基まさし・漫画の『マイホームヒーロー(1) (ヤングマガ…