あのドラマのまえに、これ。
原作を知らず、「LGBTと女装をあつかったテレビドラマがここにも」とあなどっていた。
かるく第1話をチェックするだけのつもりだった『ベビーシッター・ギン!』、脚本にも俳優にもユーモアと包容力があって、観ていてアタマがショートする。録画視聴を一旦停めて、大和和紀の原作マンガ(連載は1997年から2007年)を読んだらこちらも胸に刺さるおもしろさで、泣けて、一旦ストップ。落ち着くのに時間がかかる。
これが、少女マンガだよ。
この「少女」にはもちろん大人の女性も含まれる。ベビーシッター・ギンのような、男性的でない男性も「少女」に入れていいだろう。
いわゆるマーケティングとはすこしちがう。「少女」たちの困っていること、苦しんでいること。その軽重はさまざまだけれど、掬(すく)い上げて物語とする。寄り添い、自律をうながす優しさ。
ドラマの脚本は泉澤陽子。大和和紀のマンガとの異同をたしかめるのも楽しい。
ゲスト出演に鈴木杏と渡部豪太。子育てが大変なお母さんと、まわりにはイクメンとおもわれているがまるで子供の面倒を見ないお父さん。どちらも厭なかんじになり過ぎず、浮き彫りにされた問題を観ていられる。
そしてゆりやんレトリィバァと竜雷太。大野拓朗。やわらかなキャスティングだ。
大野拓朗が美しい。長身で、慎みがあって、ナニーとして違和感なく、誇張せず、日本の公園をあるいていても辺りにふしぎな色を添える。女装というより女性の印象をあたえるのも凄い。