大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

2019-01-01から1年間の記事一覧

〈日本はかくも狭い国である。運命もくそもないのである〉  西東三鬼

昭和十七年の冬、私は単身、東京の何もかもから脱走した。 さいしょの一行からゾクゾクする。逃げだす者がおぼえる陶酔を想うと昂奮してしまうのだ。 「私」は神戸にいた。〈街の背後の山へ吹き上げて来る海風は寒かったが、私は私自身の東京の歴史から解放…

純愛。騎士道的な。どこか虚言のけはいもある。

大人計画『キレイ〜神様と待ち合わせした女〜』を観て連想したのは『華麗なるギャツビー』。 《ケガレ》《まなざし》《花》といった。 成就しない。それなのに完成はある。

「なんだか、最近のお金持ちは宇宙に行きたがりますもんね(笑)」  松尾スズキ

松尾スズキがシアターコクーンの芸術監督に就任し、4度目の再演となるミュージカル『キレイ 神様と待ち合わせした女』。大人計画。初演の2000年から、ばしょはコクーンときまっている。 その歴史、関係性、初演執筆時のポテンシャル、モチベーションなどが旨…

〈街の空 空の街 空見れど 空見れど〉

少年王者舘『アサガオデン 劇場版』観る。 野外で行われたダンスパフォーマンスを、スズナリの劇場に。新たに落語を盛りこんだ。 振付・夕沈、演出・天野天街、音楽・珠水。生演奏・坂本弘道。落語台本・河井克夫。 呼ばれているのはアリスかとおもったら、…

「寺の符牒は噺家が考えたんじゃねえか?」  蒟蒻問答

『スペース・ゼロB1寄席』行く。出演は春風亭一猿、神田すず、三遊亭わん丈。 春風亭一猿のマクラで聴いた都電落語会の話に胸詰まる。 都電落語会の運営は林家こん平事務所によるもので、車内のことゆえ楽屋なく、演者のすぐそばに林家こん平師匠がいる。若…

〈迷うた道でそのまま泊る〉

大駱駝艦 天賦典式『のたれ○』観る。 集団で踊る。ソロとちがったユーモアが生まれる。『のたれ○』は種田山頭火の生涯を追った。 開演時間になると、客席通路に行乞の山頭火が現れた。それも五人。経を唱え、観客に銭をねだる。あちらこちらで。山頭火の厚か…

「眩しいなあ。夏の青い空がワチには眩しい」

『相対的浮世絵』観る。脚本・土田英生。初演は2004年。 2010年に再演。そして今回の2019年。 中年期を迎えた同窓の男二人のもとに、高校時代に亡くした旧友と、弟が現れるようになる。おばけとか幽霊というふうに呼ばれるのはいやがるが、どうやらそういう…

険しい若者の顔はなく、あどけない。幼時をのこしたまなざしが愛しい。 『アンアン』2019.11.20、岸優太。「正直、『アンアン』の表紙は、30代くらいに決めたいと思っていたので、“まだ、色気発展途上の今でいいの?”と驚きました」にはじまって、でてくるこ…

伸縮自在の人食い虎

先行くものを想うから、虚構は生まれる。オマージュと奇想。 ITOプロジェクトによる「糸あやつり人形芝居『高丘親王航海記』」を観た。原作は澁澤龍彦の小説。脚本・演出、天野天街。 おかしな話である。澁澤龍彦がおかしいのか、天野天街がおかしいのか、人…

種田山頭火賞受賞のハナシやそこから生まれる『のたれ○』のことなど

『舞踏の生まれるところ 麿赤兒と大駱駝艦 武蔵野文化』に行く。インタビュアー鈴木理映子。成蹊学園本館大講堂。 成蹊大学に新設される芸術文化行政コースのPRの一環として、吉祥寺にスタジオをかまえる麿赤兒にも話が回ってきた。 「白塗りで自転車に乗っ…

「人間、どこかで寂しさを持っていないと人間になれないでしょ」  鬼海弘雄

平凡社。写真家・鬼海弘雄の対話集。となりに山岡淳一郎。 「はじめに」で鬼海は〈自分の歩幅を守り続けるのは、簡単なようで難しい。どのようにして歩幅を保ってきたかは、それぞれの対話に語られている。キーワードの一つは「旅」だ〉と記す。ゆるやかなが…

「映画はまだ慣れません。余裕なんてなくて、がむしゃらにやっています」  平野紫耀

『Komachi』2019.9。女性的にしっかりしたメイクが、アミ・アレクサンドル・マテュッシのおおきな薔薇のセーターと合う。若くて、清潔。セーターの価格は10万円ちょっと。 “岸優太くんにジャンケンなしでおごらせたい” 岸くんは先輩なのにジャンケンで負けな…

「地球に隕石が衝突したはずみで毒ガスが発生した。ガスは毒の雨となって海に降り注いだ。(……)戦う前から詰んでいたのだ」  モササウルス

『続 わけあって絶滅しました。』丸山貴史、著。絵はサトウマサノリ、ウエタケヨーコ、北澤平祐。監修、今泉忠明。 絶滅を引き起こす最大の理由。それは「環境の変化」です。 (……) 「強い」「弱い」は環境によって変わります。 だから、どんな生き物が生き…

電車を乗り換えるときに、買った

King & Princeが載った『andGIRL』2018.11を買ったという記録はあるのに、ひらいた記憶がない。いつからじぶんの時間をとれなくなってるのかわからない。ジャニーズに触れていないと思考が、ことばが欠けはじめる。 『andGIRL』2019年10月号。あかるい笑顔。…

「トオルってさ 言いたいことあると黙るよな いつもすごいしゃべるのに」

行為をえがかないBLかな、とおもって読みはじめた。 絵は、写実的ではないけれど色気がある。骨が太く、おとこの膚の匂いがする。タイトルは『てだれもんら』。手練の者たちということだ。日本の料理人と、庭師。 週末に、ひとつの部屋で寝るものの、えがか…

「売春婦がつぎつぎにころされる 事件が クリスマスシーズンに起こった」

『ロンドン・ロード ある殺人に関する証言』(2015)。 2011年初演のミュージカルを映画化。スリリングなつくりに、にやりとする。 イプスウィッチ連続殺人事件と検索すればでてくる実際の事件、その狂騒や差別がすぐ目のまえのことのようだ。 えがかれるの…

「じぶんの死を想像して生きようともがけば、どんなことでも成し遂げられるはず」

「体当たりの演技が売りじゃなかったのか」 「演じることが怖いから、何にでも挑戦しただけよ」 『ファング一家の奇想天外な秘密』(2015)。原作はケヴィン・ウィルソンの小説『ファング一家の奇想天外な謎めいた生活』。 なにしろキャストが佳い。ニコール…

〈霧のなかでは 秘密の友だち〉

音楽劇『あらしのよるに』観る。 主演は渡部豪太(ガブ)と福本莉子(メイ)。オオカミのリーダー・ギロに高田恵篤、おばさんヤギに平田敦子。 演劇は、おもしろい。高田恵篤のようにアングラを演り、シェイクスピア劇(それも、野村萬斎の)を演り、ファミ…

「誰もいない海に行きたいです」  新田真剣佑

きれいというのは、おちついていて、あどけないこと。そのあどけなさを青年期にも温存している。 『Ray』2019.9。表紙と記事に、新田真剣佑。 新田真剣佑の記事に触れるたび震えるのは、インドアなのに交遊をひろげているところ。好奇心旺盛。それを、あちら…

「これ、食えって?」

コナリミサトの原作は、ひとつのばめんに「いやなこと」と「いいこと」を盛りこんでくる。そのために物語は途切れない。事態が好転するのを信じて読み進める。 誇張をしなくてもヒトはイビツで、だからヒトと触れあうセックスや恋愛には抗しがたいものがある…

「木南さんのせりふに『寝顔が美しい』とあるので、最近パックもしています(笑)」

家事に類することがひとつ片づいたので、深夜のコンビニに行って雑誌を購入。 『テレビライフ首都圏版 2019年 8/2 号 [雑誌]』と、『MORE(モア)2019年8月号 付録:uka 美髪パドルブラシ』。 『TVLIFE』の山田涼介がとてもきれい。山田涼介を好きな友人が、王…

「半人前でも、三人揃えばなんとかなるっしょ」

週末のお楽しみ、大野拓朗主演のドラマ『ベビーシッター・ギン!』。あつかう世界が嘘でなく、陰惨でもなくがんばって生きようという気になる。 第3話。脚本、嶋田うれ葉。 公式はネタバレを避けているけれど、捨て子をめぐる凄い話なので、大胆に告知するの…

アレクサンドリア、世界の結び目。

「ナショナル・シアター・ライブ」の『アントニーとクレオパトラ』(2018)、二人の死が語られるラストを冒頭にもってきたので、おどろいた。そういういじりかたを、予想していなかった。 『アントニーとクレオパトラ』が書かれたのは四代悲劇のあと、比較的…

あのドラマのまえに、これ。

原作を知らず、「LGBTと女装をあつかったテレビドラマがここにも」とあなどっていた。 かるく第1話をチェックするだけのつもりだった『ベビーシッター・ギン!』、脚本にも俳優にもユーモアと包容力があって、観ていてアタマがショートする。録画視聴を一旦停…

「美しいと感じるものはなんでも好きです」  萩尾望都

萩尾望都の『芸術新潮 2019年 07月号』と平野紫耀の『美ST』を購入。ジャニーズにもとめ、推したくなるのは萩尾望都的なキャラクターの真ッ直ぐな感情と、社会と接触したときの歪みと、身体能力に由来する挟持なのだと得心する。 なによりも先ず、萩尾望都。…

JUST BE JOYFUL

スペースシャワーTVプラスの「コリアンヒッツ」をながしていたら、きれいな、淡くするどい二人組のMV。眼をうばわれた。JBJ95の「AWAKE」。 JBJ出身の1995年生まれ。キム・サンギュンとKENTA(高田健太)。 しっかりした、男っぽい貌のほうがKENTAかとおもっ…

永瀬廉  「平野紫耀とは『戦友でしかない』」

『ノンノ』2019.8。King &Prince目当てで買ったのだけれど、雑誌としての充実、旬をピックアップする巧さが先ずある。 旬のひと。kemio。ノンノモデルたち。ふわふわと、謙虚である。モデルたちが「最近のカルチャー活動」として紹介するアーティストや小説…

〈学生の時に言われた言葉たちは本当に尊いのだ〉  さいあくななちゃん

トークライブ「芸術ロック公演」(ワタリウム美術館、オン・サンデーズ)行く。『芸術ロック宣言』の現代芸術家・さいあくななちゃんと、装丁を手掛けた川名潤によるイベント。あまりに率直で、何度も胸を衝かれた。 さいあくななちゃんはこの本に命を懸けて…

〈あそこにも ここにも しずかに しずかに しんでいる せみ〉

伊藤比呂美 文、片山健 絵『なっちゃんのなつ』。 ともちゃんちに あそびに いったら だれも いなかったので なっちゃんは ひとりで かわらに でかけました 書きだしから、やられる。はじまっている。詩は、こどものつくるぼうけんものがたりに近い。 省略も…

「わたしの名前は『病気』です」

リオフェス2019・吉野翼企画『疫病流行記』(北千住BUoY)を観る。 寺山修司、岸田理生の共作である『疫病流行記』。《見世物の復権》という言葉に倣えば、ここでは《疫病》の復権が目論まれた。流行りの病いを隠喩として呼びこむのでなく記憶、潜んで在るも…