大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

地に足のついたストーリーテリング

オクイシュージ脚本、監督『王様になれ』(2019)。原案は山中さわお。the pillows 30周年記念映画。 若いときに賞こそ獲ったもののなかなか目がでない写真家志望の神津祐介(岡山天音)、27歳。叔父(オクイシュージ)のラーメン屋で働いている。 祐介が出…

「情熱をうしなったというよりは、情熱を理想化して、凍りつかせてしまったと言ったほうがいいのかもしれない」

ケムリ研究室no.2 『砂の女』(シアタートラム)。主演は緒川たまき、仲村トオル。ほかにオクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士、廣川三憲。声(とシルエット)、町田マリー。音楽・演奏、上野洋子。 原作は安部公房の小説。濃密かつ映像的な世界がみごと演劇…

安部公房『友達』

配信、シス・カンパニー『友達』(新国立劇場・小劇場)。安部公房原作の、典型的な不条理劇。《疎外》をかんじている孤独な青年の部屋を、まったく面識のない大家族が訪れ、住みつく。監視と監禁。ドラマの密室性を高めるためには部活や会社などよりも都合…

「これより千六百年の休憩に入ります」

作・しりあがり寿、演出・天野天街。芸術監督に流山児祥。『ヒ me 呼』観る。 器のおおきい流山児祥と、器のおおきいしりあがり寿と、器のおおきい天野天街と。想像以上にファンタジーで、リアルで、古代で、現代だった。 物語のはじまりは現代の温泉場。そ…

「物理学者でありながら、罪に染まらず」

フリードリヒ・デュレンマット原作『物理学者たち』(ワタナベエンターテインメント Diverse Theater)観る。上演時間2時間10分。 舞台は「桜の園」という名の、いまは精神病患者の施設となったサナトリウム。 自称ニュートン、自称アインシュタイン、殺害、…

監禁の予告

『准教授・高槻彰良の推察』第7話「四時四十四分の怪」。 「見られてしまったね……。これを説明するには、いろいろ話さなきゃいけないことがある。あまり楽しい話じゃないから、できればいまはしたくない。構わない?」 無言の深町尚弥に「やっぱり深町君は…

「先生は、おれがいなくても嘘を見抜けるんじゃないですか?」

『准教授・高槻彰良の推察』第4話。 微熱で寝込んでいる深町尚哉(神宮寺勇太)。夢うつつに、不吉な祭りの太鼓の響きと、訪問者の玄関を叩く音が混じる。真ッ直ぐな演出。台本。気持ちがいい。 看病にやってきたのはもちろん高槻で、持参のアイスクリームが…

〈そうだ私 いつもその2つに分けてた 老と若 世界はその2つしかないみたいに〉

松本英子のエッセイ漫画『49歳、秘湯ひとり旅』を堪能。どんなフィクションにも書き手の実体験を伴ったリアリティは入りこんでいるだろうけど、そのうえで作家が透明になろうとするエンタメ指向もあり、エッセイでそれをやれば「ただのレポ」になってしまう…

(出た…! 粉もんになると出てくる奉行おかずちゃん…!)

オトクニ『広告会社、男子寮のおかずくん』第7巻。完結。 あたたかくって、品がある。大阪弁の小説を読んでいるようで好きだった。 おまけの4コマパートにでてくる「たこせん」大阪のそれは「えびせんにたこ焼きをはさんだやつ」で、「想像どおりの味だ〜…

「きみはもう、ここの人間だよ。ここのコーヒーを飲んだだろ」

ドラマ『准教授・高槻彰良の推察』、びっくりするくらいおもしろい。 いくつもの挿話を並走させぬシンプルな語りゆえに、原作小説からのコミカライズ、さらにドラマ化という整理、洗練が意味をもつ。佳く刈りこまれている。 「TV LIFE」伊野尾慧の「神宮寺君…

「ナイフを落とすと『男』が現れる スプーンだと『女』が フォークだと『男でも女でもない』だろう」

ロドリゴ・グディノ監督『恐怖ノ黒洋館』(2012)。82分。原題は「The Last Will and Testament of Rosalind Leigh」――ロザリンド・リーの遺言。 老女ロザリンド・リーのモノローグではじまる。この女性がこの世を去っていることは、すぐにわかる。息子のレ…

「服によってダンスがうまく見える、見えないっていうのが結構あって」  平野紫耀

『TV LIFE』2021.8.20 平野紫耀。官能的なだけではない。この笑顔。 撮影・干川修、中村功。 二年ぶりの『かぐや様』は「本読みの時から監督にたくさん相談しましたし、続編だからといって安心することはなかったです」。

情念がほぐれる。神は居る。

シルク博物館に寄ってから、とりふね舞踏舎『サイ Sai 踊るべき人は踊り、歌うべき人は歌え』。 ずいぶん前に足をはこんだときよりも、いくらか観る眼が養えていた。上演時間90分が、あっという間に経つ。 立ちどまること、うずくまること――身体的な凝縮、緊…

「目のまえのものしか変えられない……。見えていればそこに命を吹きこめる」

『グースバンプス 呪われたハロウィーン』(2018)。1作目の邪悪な腹話術人形スラッピーが再度登場。ハロウィンの夜、スラッピーが町じゅうの仮装人形や道具に生命を与えるという展開は、モンスターの可能性を狭めているけれども。 活躍するのは中学生のソニ…

おとなとこどもが、おなじ壁をみている。

『グースバンプス モンスターと秘密の書』(2015)。ジュブナイルだが『キャビン』や『ゴーストバスターズ』(2016)の賑やかさ。あるいは『バタリアン』『ビートルジュース』辺りだろうか。種々のモンスターをモブとして扱うところが良い。 シナリオも魅力…

アルゼンチンホラー

デミアン・ラグナ監督『テリファイド』(2017)。 屋内。血まみれの女性、被疑者にされる男性パートナーという序盤はウェス・クレイヴンの『エルム街の悪夢』(1984)を想い起こさせてくれた。『壁の中に誰かがいる』とか。建て付けの良くない家が恐いものを…

「怖がることを怖がらないで」

『ハイルシュテッテン〜呪われた廃病院〜』(2018)。結びは一応ホラーだけれど、終盤の二転三転はサスペンスかも。 人気ユーチューバーのコラボ企画として廃病院で肝だめし。冒頭字幕ではサナトリウムだったこの施設で人体実験が行なわれていたこと、106号…

「人って本当によく嘘をつくんです そしてそれを指摘されるのを嫌がる」

原作・澤村御影、漫画・相尾灯自。『准教授・高槻彰良の推察』コミカライズの第2巻。 君を気持ち悪いと言う人がいるなら きっとその人は僕のことも気持ちが悪いと思うだろうね 高槻彰良と深町尚哉のむすびつき。 「不思議な話が生まれる背景には そのまま語…

「怪異っていうのは『現象』と『解釈』のふたつによって成り立っているんだよ」

「解釈をするときは気をつけないといけない 下手な解釈は現象そのものを歪めることがあるから」 原作・澤村御影、漫画・相尾灯自。『准教授・高槻彰良の推察』のコミカライズ、第1巻。 民俗学には「僕が調査に行ってしまったがために 何の土地的根拠もなく…

「ミステリーじゃなくてラブコメかな? と錯覚します(笑)」  神宮寺勇太

インパクトある表紙だった。撮ったのは田中和子(CAPS)。伊野尾慧と神宮寺勇太が連続ドラマ『准教授・高槻彰良の推察』。 個体差としての「かわいい」が身につくのは三十路のころかもしれない。磨きをかけた伊野尾慧が凄く、ドラマのなかで助演として輝くだ…

〈俺たちモグラ 酒があればいい〉

椿組『貫く閃光、彼方へ』観る。花園神社野外劇。 1年間、延期されていた演目。おもな舞台は1962年の新丹那トンネル掘削現場。このトンネルを新幹線が走る。目ざすは1964年の東京オリンピック。TOKYO2020に合わせたテーマでもあったわけだ。 「コロナ禍の中…

杉田玄白83歳

扉座『解体青茶婆』観る。作・演出、横内謙介。 日本の古典芸能に寄せた演出で、正方の舞台。生の演奏(ここではヴァイオリン)。間接照明、また夜を表すものとして蝋燭の灯り。 杉田玄白(有馬自由)の晩年。「蘭学事始」の草稿は出来ている。しかし、腑分…

(不器用が愛しいのか。愛しいけど不器用なのか)

『裸の少年』美 少年の髪型が新ドラマの仕様になり、楽しみになってくる。 ダンス早覚え対決。HiHi jets の作間龍斗、井上瑞稀はさすが。 そして美しさを取り戻した佐藤龍我。遠慮がちな時期を経て、よみがえる悪童の快活。悪童の心はまっすぐだ。 『ザ少年…

〈議会も虚ろな空間にすぎないのだ。失敗も成功もすべては上層部が決定する。私が、北と南の体制がどこか似ているという疑問を抱きはじめたのはその頃からである〉

李恢成『可能性としての「在日」』。エッセイと講演録。1970年から2001年まで。ながい時間が1冊にまとまっている。ここで何度も言及される北朝鮮と韓国の平和的統一は、まだ実現していない。 初出もあるけれど、底本に『沈黙と海』『円の中の子供』『時代と…

「世界を食ってやるって思ってた。だけど実際は」

インターネットの情報や、闇。そこを泳いでカネを持とう、権力を握ろうというイキッたIT仲間たち。ひさしぶりにあつまる。 密室の会話劇。近隣のWi-Fiすべてに入ることができる、きみたちのパスワードも当ててみせるなんて話からウィキリークス、アノニマス…

〈屋根の間をゆるゆると鷲だ〉  岡田幸生

岡田幸生の句集『無伴奏』。はじめに刊行されたのは1996年。文庫サイズの新版を、御本人から買うことができる。 「序」で北田傀子が書いている。 〈短時日のうちに随句(自由律俳句)というものの、いわば息遣いがのみこまれたようで、私は目を見張る思いが…

舞台にも。俳優がたくさんたくさん乗っていた日を思いだしつつせむし男。

演劇実験室◎万有引力『青森県のせむし男』観る。琵琶、川嶋信子。二十五絃箏、本間貴士。上演時間1時間15分。 寺山修司の、探偵小説ごのみ。独白と、噂話ではじまるので、人間と人間がぶつかり合うドラマは中盤以降。 老いたる花嫁・大正マツに高田恵篤、女…

画も声も清潔。

BL長編アニメ『海辺のエトランゼ』(2020)。紀伊カンナ原作。 舞台は沖縄の離島。母を亡くして孤独な実央(松岡禎丞)×ゲイだが未経験の小説家・駿(村田太志)。 恋愛感情なのかどうか語られることこともなくするりと三年後の再会。「理由なんかいいんだよ…

排除する思春期

『プリンシパル〜恋する私はヒロインですか?〜』(2018)。原作・いくえみ綾。監督・篠原哲雄。脚本は持地佑季子。 若き日におとずれる好意の変遷。2時間の映画だからエピソードは省略される。あいてをいつ好きになり、どこで好きでなくなるか。そこにあま…

マヒ×ヒロ

『散歩する侵略者』(2017)の衝撃は高杉真宙だった。浮世ばなれした美少年。 長澤まさみと松田龍平が演じる、壊れつつあった夫婦の愛の物語だが、あんがい高杉真宙と長谷川博己のドラマでもあった。 ジャーナリストの桜井(長谷川博己)は宇宙人を名のる天…