大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

〈思い浮べれば思い浮べるほど、混乱したシインがシインに重り、雑沓した光景が光景に重って、乱れて、絡みついて、こんがらかって、何が何だかわからないような形になった〉

こうしてこの筆を執って見ようと思うまでに、既に一月半以上の月日が経った。その間にはいろいろなことがあった。それに付随して起った甘粕事件もあれば、暴動殺人の亀戸事件もあった。その時分はまだ暑かったのに、蚊がいたのに、虫が鳴いていたのに、今で…

きっとだれもが偽善者で、メンヘラ。

『来る』(2018)、原作は澤村伊智(『ぼぎわんが、来る』)。監督、中島哲也。脚本は共同で中島哲也と門間宣裕、そして岩井秀人。リアリティ凄く、人物がくっきりとしている。「わかんねえす」と言ってる高梨(太賀)と「あたしばかだから」と口にする比嘉…

「来ないで。もう誰も信じない」

映画『サイレン FORBIDDEN SIREN』(2006)。監督・堤幸彦。 原作はホラーゲームだけれど、土俗的な部分もある怪獣映画だとおもったほうが、観易い。じわじわと、それでいて急展開する。ここでの恐怖は関係性や距離に属するものでない。空気である。 出演に…

不可解な恐怖は欠いていた

製作サム・ライミ、監督アレクサンドル・アジャ。愛着ある名だがどちらもスケールダウンしつつあり、『クロール 凶暴水域』(2019)も浸水した一軒家のなかでワニと戦う小じんまりしたもの。予告編ではわくわくできたんだけど。 ストーリーには挫折と和解。…

「この銀メダル、きみのだろ」「ちがうよ。だって、捨てたんだもの」

2013年の映画『君に泳げ!』。「国民的弟」であるウサン(イ・ジョンソク)と、天才肌のウォニル(ソ・イングク)。ウォニルはふざけてばかりいるが、そこに見え隠れするのは陰のある物語。 少年期のウォニルは金メダルだった。ウサンは銀メダル。時経て二人…

「忘れっぽいことは問題じゃないんです。忘れることが問題なんです」

2018年の映画『ハナレイ・ベイ』。吉田羊、佐野玲於、村上虹郎どのひとも活躍めざましく、そのためにずいぶん昔の映画のような印象もある。 原作は村上春樹『東京奇譚集』のなかの一編。やや説明的なところを俳優にゆだねて映画は佳品となっている。脚本・監…

根本豊による『五月の鷹』。以来の、

夢精して目が覚めた。万有引力こわい。春風亭一之輔の『鼠穴』(「落語ディーパー」)聴いて、スズナリに行く。席に着くと舞台では高田恵篤が首に縄を巻いていた。『鼠穴』もそんな話だ。『鼠穴』の主人公は若いが、リア王みたいなものだ。なにもかもうしな…

魔痢子「何もかも、妄想なのです」

最後に生き残った者たちは激昂し、それまでは従順で高潔だった息子が父を殺す。禁欲家は近親者たちの肛門を掘る。淫蕩な者は純粋になる。守銭奴は金貨を鷲づかみにして窓から投げ捨てる。戦争の英雄はかつて命がけで救った町を焼き払う。上品な者は着飾って…