大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

映画

どんなにものぐさになってもこれだけは映画館で

『嘘八百 なにわ夢の陣』観る。監督、武正晴。脚本は今井雅子と足立紳。 お正月映画として定着しつつある三作目、すでに関係は構築できているので物語がぐんぐんうごく。 冒頭は、麿赤兒の紙芝居。こんなところから嬉しい。そこで語られる太閤秀吉のお宝にあ…

やんちゃなくろねこ、風をつくる。

『くろねこルーシー』(2012)。映画版は、テレビドラマの前日譚。陽の父・賢を主人公にしたメルヘン(猫はしゃべらない)。 迷信を信じ過ぎるために占い師として大成できない鴨志田賢(塚地武雅)。隣のブースの同業者(濱田マリ)にキャラを立てろと助言さ…

耐性がつく。視える力がつよくなる。

『ルームロンダリング』(2018)。ツタヤクリエイターズプログラム、2015年の準グランプリ企画。 事故物件を実話系でなく、ファンタジーとして構築している。分断されがちな短編集の如き霊たちをひとつのばしょにあつめるのも佳い。 劇中に登場する児童書と…

血だまりの(イマジナリー)フレンド

ジェームズ・ワン監督『マリグナント 狂暴な悪夢』(2021)。 さまざまな引用のなかでいちばんつよくかんじたのはウェス・クレイヴン。『エルム街の悪夢』『スクリーム』『壁の中に誰かがいる』……。襲ってくるのは人間的な身体能力と、憎悪。 スリラー、サス…

さいごは、東京大衆歌謡楽団。

「『二つ目物語』完成記念特別上映会」行く。 監督、林家しん平。上映前の進行は蝶花楼桃花。しん平師、喋れば飽きさせない。今作・柳家㐂三郎の演技と『落語物語』(2011)の柳家わさびの違いや、前座ぽっぽ→二つ目ぴっかりを経てしん平映画常連である蝶花…

するどさのとれた愛情

マイテ・アルベルディ監督『83歳のやさしいスパイ』(2020)。ほどほどにお節介な、それだけに溜めのあるドラマは生まれにくい、隣人愛あふれる映画を観たくて。 89分。尺も良い。登場人物たちは若者でないから「挫折した」とか「失った」といった断定よりは…

現場仕事と恋物語

『大怪獣のあとしまつ』観る。 雨音ユキノ(土屋太鳳)が元カレの帯刀アラタ(山田涼介)をいまも想っている。冒頭、同窓会のばめんで恋愛映画であることが示されて、わなないた。 脚本、監督は三木聡。ふざけ散らかしているようでいて、まじめな愛が発露す…

「あんたがいちばん謝らんならん相手はもうこの世におらん」

崔哲浩の脚本・監督・出演映画『北風アウトサイダー』観る。 崔哲浩は在日三世だが、物語の匂いは二世のもの。オモニへの思慕だろうか。あくまで泥臭く、野心と感傷をナイマゼにした作りが良い。素直に進展してきた問題でもないのだから。 個人のエゴよりも…

「人間には、二通りあるの。……いなくなるといなくなるタイプと、いなくなってもいるタイプ」

三木聡脚本・監督『図鑑に載ってない虫』(2007)。赤塚不二夫みのある『真夜中のカーボーイ』か。悪ふざけの連続のようで、急に泣かせる。 編集長(水野美紀)に命じられ、臨死体験ルポを書くべく「死にモドキ」探しをはじめる「俺」(伊勢谷友介)。相棒と…

YUJIRO IN EUROPE

映画では、皆さんの皮膚に、寒暖、つまり、冷たい温ッたかいの感じを差し上げることはできませんが、ええそれは、色を見て頂ければ、わかると思います。 画面がいきなりバーン! と変わると、近代設計の粋(すい)を凝らした、それこそ、本当にイカす道路が…

女であることを隠していないがいまは男として生きる。

坂本龍馬 ええか! 総司がいつまでもオトコの格好して、刀を振り回しとる時代は終わりにせないかんのじゃ! 原作、つかこうへい。映画『幕末純情伝』(1991)。脚本・監督薬師寺光幸。 公開時は『ぼくらの七日間戦争2』との二本立てだったらしい。それで編…

「わたしをだましたのね? ひどい子ね」

ジョン・ポルソン監督『ハイド・アンド・シーク』(2005)。“イマジナリーフレンド”をめぐる娘と父の物語。出演はダコタ・ファニングとロバート・デ・ニーロ。 『裏窓』『シャイニング』『エクソシスト』など、引用による誘導が佳い。殺人事件が起こるのかな…

ジョエル・コーエンの『マクベス』。

どこへ逃げたら? 何も悪いことをした覚えはない。いいえ、この世に生きているのだ、ここでは、悪いことをして、かえって賞(ほ)められ、よいことをして、危ない目にあい、ばか呼ばわりもされかねない、そうだとすれば、悪いことをした覚えはないなどと、所…

原作は筒井康隆。

岡本喜八監督『ジャズ大名』(1986)85分。 役柄もあって古谷一行が格好良い。きっぱりと、明朗な科白。不戦派の大名を演じる。 戊辰戦争の要衝に、城がある。西から東から、新政府軍がとおりたい、幕府軍がとおりたい。どちらに与することもなく、通行させ…

はいゆうたちのいるところ

『ヒルコ/妖怪ハンター』(1991)。原作は諸星大二郎。監督、塚本晋也。 特撮、SF、ホラーへのオマージュもふんだんに、画がしっかりと怖い。 出演は沢田研二、工藤正貴、上野めぐみ。ユーモラスな部分を沢田研二が受けもつことで、怖くて可笑しい諸星大二…

「ここはリーザ。チェルノブイリとおなじくらい退屈なところだ」

2000年の映画『相撲取りブルーノ』(Sumo Bruno)。前年にドイツのリーザで開催された第8回世界相撲選手権大会の熱がさめないうちにつくられた物語。 主人公のブルーノは失業中の内気な巨漢。ジョン・ベルーシよりもMr. ビーンに似た印象。 朝から泡風呂に…

孤独とあこがれと

『リザとキツネと恋する死者たち』(2014)。 舞台はハンガリー。日本の歌謡曲を好きな女と、フィンランド歌謡を愛する男。どちらもすこしはみだしている。 女の名は、リザ(モーニカ・バルシャイ)。愛読する日本の小説のヒロインのように、30歳になればハ…

地に足のついたストーリーテリング

オクイシュージ脚本、監督『王様になれ』(2019)。原案は山中さわお。the pillows 30周年記念映画。 若いときに賞こそ獲ったもののなかなか目がでない写真家志望の神津祐介(岡山天音)、27歳。叔父(オクイシュージ)のラーメン屋で働いている。 祐介が出…

「これも霊の仕業なの!?」「これは……タブレットのギガ不足です」「プランを見直しなさいよ!」

ホラー・コメディ『祟り蛇ナーク』(2019)。出家志願のイケメンと、二人のオネエ。 画の意識はつよい。フツメン、少年修行僧。練り歩く死体。流しっぱなしにしておいて、かれらが目に入るのは、わるくない。 しかし台本はゆるい。主人公ナーンと、祟り蛇と…

「ナイフを落とすと『男』が現れる スプーンだと『女』が フォークだと『男でも女でもない』だろう」

ロドリゴ・グディノ監督『恐怖ノ黒洋館』(2012)。82分。原題は「The Last Will and Testament of Rosalind Leigh」――ロザリンド・リーの遺言。 老女ロザリンド・リーのモノローグではじまる。この女性がこの世を去っていることは、すぐにわかる。息子のレ…

「目のまえのものしか変えられない……。見えていればそこに命を吹きこめる」

『グースバンプス 呪われたハロウィーン』(2018)。1作目の邪悪な腹話術人形スラッピーが再度登場。ハロウィンの夜、スラッピーが町じゅうの仮装人形や道具に生命を与えるという展開は、モンスターの可能性を狭めているけれども。 活躍するのは中学生のソニ…

おとなとこどもが、おなじ壁をみている。

『グースバンプス モンスターと秘密の書』(2015)。ジュブナイルだが『キャビン』や『ゴーストバスターズ』(2016)の賑やかさ。あるいは『バタリアン』『ビートルジュース』辺りだろうか。種々のモンスターをモブとして扱うところが良い。 シナリオも魅力…

アルゼンチンホラー

デミアン・ラグナ監督『テリファイド』(2017)。 屋内。血まみれの女性、被疑者にされる男性パートナーという序盤はウェス・クレイヴンの『エルム街の悪夢』(1984)を想い起こさせてくれた。『壁の中に誰かがいる』とか。建て付けの良くない家が恐いものを…

「怖がることを怖がらないで」

『ハイルシュテッテン〜呪われた廃病院〜』(2018)。結びは一応ホラーだけれど、終盤の二転三転はサスペンスかも。 人気ユーチューバーのコラボ企画として廃病院で肝だめし。冒頭字幕ではサナトリウムだったこの施設で人体実験が行なわれていたこと、106号…

「世界を食ってやるって思ってた。だけど実際は」

インターネットの情報や、闇。そこを泳いでカネを持とう、権力を握ろうというイキッたIT仲間たち。ひさしぶりにあつまる。 密室の会話劇。近隣のWi-Fiすべてに入ることができる、きみたちのパスワードも当ててみせるなんて話からウィキリークス、アノニマス…

画も声も清潔。

BL長編アニメ『海辺のエトランゼ』(2020)。紀伊カンナ原作。 舞台は沖縄の離島。母を亡くして孤独な実央(松岡禎丞)×ゲイだが未経験の小説家・駿(村田太志)。 恋愛感情なのかどうか語られることこともなくするりと三年後の再会。「理由なんかいいんだよ…

排除する思春期

『プリンシパル〜恋する私はヒロインですか?〜』(2018)。原作・いくえみ綾。監督・篠原哲雄。脚本は持地佑季子。 若き日におとずれる好意の変遷。2時間の映画だからエピソードは省略される。あいてをいつ好きになり、どこで好きでなくなるか。そこにあま…

マヒ×ヒロ

『散歩する侵略者』(2017)の衝撃は高杉真宙だった。浮世ばなれした美少年。 長澤まさみと松田龍平が演じる、壊れつつあった夫婦の愛の物語だが、あんがい高杉真宙と長谷川博己のドラマでもあった。 ジャーナリストの桜井(長谷川博己)は宇宙人を名のる天…

「僕たちは、ただ集まり、ただ漠然と、奇跡だけを信仰していた」

『昭和歌謡大全集』(2003)。監督・篠原哲雄。脚本・大森寿美男。原作は村上龍。青年とオバサンの抗争劇。 みんなマトモでスマートなんだから、暴力に訴える奴なんかいないとおもわれていた一時期の日本。戦争や、自国民への武力行使は遠くの世界のお話だっ…

表紙はチャウヌ

『ニューズウィーク日本版』2021.5.4/11、「韓国ドラマ&映画50」。 これから公開されるホン・サンス監督『逃げた女』、イ・ジョンピル監督『サムジンカンパニー1995』が待ち遠しくなる。 「私のとっておき映画5本」。はるな愛、クォン・ヨンソク(権容奭)…