『リザとキツネと恋する死者たち』(2014)。
舞台はハンガリー。日本の歌謡曲を好きな女と、フィンランド歌謡を愛する男。どちらもすこしはみだしている。
女の名は、リザ(モーニカ・バルシャイ)。愛読する日本の小説のヒロインのように、30歳になればハンバーガーショップで恋がはじまると夢想している。
リザのイマジナリーフレンドであるかのような顔をしているトミー谷(デヴィッド・サクライ)はじつは死神で、リザに懸想し、離れたくない。リザに近づく男を片っぱしからころしていく。それでリザは警察から目をつけられる。
あたらしい人物が登場するや「死者」とおおきくテロップされて可笑しい。この文字を打っているのはトミー谷かもしれない。
周囲から変わり者だとおもわれている巡査ゾルタン(サボルチ・ベデ・ファゼカシュ)は、住むところなく、リザが相続した屋敷に間借りすることとなる。トミー谷が引き起こす「事故」がたびかさなるも、ゾルタンは怪我をするだけ。観ていてキュンとする。ゾルタンは無口だし、大袈裟なところがない。リザ、はやくゾルタンの優しさに気づいてとおもうが、リザはドラマのような出会いをもとめて死者を増やしてばかりいる。
リザはじぶんが九尾の狐(日本国。栃木県、那須)なのではないかとかんがえる。あいてをとりころし、愛を得ることができない。その呪縛を解いてくれるのがゾルタンだろう。
どのみちひとはしぬ。けれどそれはけっこう先のことかもしれないという、お話。
ハッピーエンドのあとも人生はつづく。