大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

現場仕事と恋物語

『大怪獣のあとしまつ』観る。

雨音ユキノ(土屋太鳳)が元カレの帯刀アラタ(山田涼介)をいまも想っている。冒頭、同窓会のばめんで恋愛映画であることが示されて、わなないた。

脚本、監督は三木聡。ふざけ散らかしているようでいて、まじめな愛が発露する。

アラタには行方をくらましていた時期があり、そのときにユキノは雨音正彦(濱田岳)と結婚した。正彦とユキノとアラタはかつての同僚、そして友人だった。

恋愛と結婚は別物というやつ。正彦は、ユキノの心がアラタにあるとを知っている。それで激しく嫉妬している。監督も語るとおり『グレート・ギャツビー』の悲劇が匂う。ギャツビー=アラタの変身譚だ。変身は、悲劇を強いる。

機械仕掛けの神〉を提示してはじまる『大怪獣のあとしまつ』は〈機械仕掛けの神〉で終わるほかない。それは綺麗で、凛としていた。土屋太鳳も山田涼介もストイックに人物を全うした。

キャストが良い。ユキノの兄、青島涼にオダギリジョー。発破のエキスパートという。埃と汗。命を懸けた現場仕事の色気。堅苦しい組織を離れ、アラタたちとは疎遠になっていた。それでも再会というものはある。この辺りを、言語化せずに演技でみせる。ぞくぞくする皮膚感、身体性に多くのことを喚起される。淡々と生きてしまうと忘れがちだが現場仕事は青春に近い。

舞台寄りの映像作品として、チョイ役も豪華。伊勢志摩、村松利史、外波山文明など大画面で観て嬉しくなる。

岩松了の出演作を観るたびに「この岩松了がすごい!」とおどろくけれど、今作でまた更新される。“プロの大喜利を気取っているがおもしろくない一般人”という高度なところを突いてくる。そしてその素人臭さがとてもかわいい。

「わざとらしい作業服」に身を包んだ閣僚たちの緊密なコメディを映画の値段で観れたのがありがたい。西田敏行笹野高史嶋田久作、六角精児、笠兼三、矢柴俊博MEGUMIふせえり

かの女たちが演じる政治家は、好奇心に勝る野心をもっている。ずいぶんと怖い話だが、それは物語の要請でもあって、知的好奇心で怪獣に肉薄しているとそもそもの恋愛性が壊れてしまう。土屋太鳳=ユキノの大恋愛のあとしまつなのだから。