大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

地に足のついたストーリーテリング

王様になれ

 

オクイシュージ脚本、監督『王様になれ』(2019)。原案は山中さわおthe pillows 30周年記念映画。

 

若いときに賞こそ獲ったもののなかなか目がでない写真家志望の神津祐介(岡山天音)、27歳。叔父(オクイシュージ)のラーメン屋で働いている。

祐介が出逢うのは劇団を休みがちなワケありの藤沢ユカリ(後東ようこ)、29歳。二人の年齢も、相談相手が叔父なのも巧い。

父はしんでいる。父の遺影には、入江雅人。祐介の勤め先に村杉蝉之介奥村佳恵。被写体に平田敦子。隣人に野口かおる。演劇寄りのキャスティングで、すこし変だがリアリティある人物たちを印象ぶかく。

物語は、若者の一時的な挫折でテンポをわるくすることなく、流麗。岡山天音、後東ようこも凄いし、ライバルの岩井拳士朗もイケてる若手ふうで良かったが、岡田義徳が厳しくも包容力ある先輩カメラマンとして出色。本人役の山中さわおもきちんと厳しいが優しくて甘い。

この世界には、こういう先輩がいる。オクイシュージ演じる叔父さんも親身である。大人たちはあんがい味方だ。台詞にでてくる「必然」は、「奇跡」という嘘よりも確かなもの。それを信じさせてくれるのが、ライブハウスや舞台の「汗」なのかもしれない。

そのうえで汗を礼讃するような泥臭さ、青臭さがない。感心しているうちに感動して、呑みこまれた。