遅ればせながら、和山やま『夢中さ、きみに。』。書影はずいぶんまえから気にしていたが「手塚治虫文化賞(短編賞)とりましたよ! 試し読みもできますよ!」と年下の友人から推されるかたちで、やっと。
単行本は林くんが登場する4篇と、二階堂くんがでてくる4篇。1篇ずつ試し読みできるのは、送りだす側の自信だろう。
ガロとか、ヤングマガジンとか、わたせせいぞうを連想する。設定、掘り下げに無理がない。
リアリティと、ふわっとしたところと、フィクションによってどうにか辿り着けるような、得がたい幸福。
「うしろの二階堂」に、パロディの技巧を見る。タイトルは言うまでもなく『うしろの百太郎』。
二階堂くんが明らかに伊藤潤二キャラで、「二階堂…伊藤潤二の漫画に出てたよね?」とセリフされる。出どころをハッキリさせて、パロディ押しをさっさと終わらせる。やりとりはつづき二階堂くん「…別に」。対する目高くん心のうちで「沢尻エリカかよ……」。序盤にパロディ詰めこんだ。あとは本然の描写、物語に還るだけ。
和山やまは、起承転結の「承」が巧い。「転」と呼んでもいいようなおどろきがある。
そして「転」で登場人物がしっかり行動する。「結」は、さらりと。
ちんちんがでてこないのもいい。ちんちんなんて、ないでしょ。男子に。