じゃのめ『黄昏アウトフォーカス』。高校の、映画製作部。
入寮初日 寒い春
初めまして
よろしく と言った
俺の手を
取りもしないで
「…どうも」
冷たい目が
近づくな と
完全に閉じてた
キャメラ担当の土屋真央。同室の大友寿がゲイで、付かず離れず、詮索をしないで寝起きしてきた。わるくない友達だった。
ところがつぎに撮る映画がBLに決まり、監督は大友寿を主演に抜擢する。真央はなんだかおかしな気持ち。寿を意識してしまう。
いつから?
顔? 性格? どのタイミングで?
どこを好きになったの? きっかけは?
なんで今?
分かんない
ただ一つ 言えるのは
気づきたくなかった
恋をするのはキッカケであって、なにかの行動を起こすに足る熱源としてのエピソードは要らない。それじゃフィクションにならないと挿話を捏造する作品も多いが、この急展開こそ心地良いのだ。
寿の視点の語りでも急展開の呼応はあり、〈いつから? どのタイミングで? どこを好きになったの? きっかけは?〉とシンクロする。
だからこそ このまま進んでいいの?
心の乱れをえがいて巧い。読者がやきもきするのはここからだ。