大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

表題作。それと「ヤングアンドラブリー」

しるされしアイ (onBLUEコミックス)

俺の気になる奴は
その頃 既にほぼ
「あっち側」にいたんだけど!

この「あっち側」というのはゲイとかBLとかを指すのではない。十五歳。チーマー、愚連隊、不良といった「あっち側」。
ロミオとジュリエットのように家と家、家と個人が対立する必要はない。対立は古い。ただ彼岸と此岸があるだけ。あちらとこちら。
たなと『しるされしアイ (onBLUEコミックス)』。さいしょに顔に惚れる。そしてお節介を焼く。ぼくたちの若さをきっちりすくいあげている。

「す …好きな奴がッ ダチが怪我してんのに」
「いつからダチになったよ!! そっちとかこっちとか簡単に言うなよな!! 大体 うぜーんだよ 何嗅ぎまわってんのか知んねーけど」

男女の関係とちがって、男同士だからドメスティックな暴力をドラマにできる。暴力を、言語の一つとして。
『しるされしアイ』は、暴力の世界「あっち側」から逃げるというかたちで暴力をえがき。のがれても、「あっち側」に行くようなおとこの子のなかにはなにかよくないものがのこっているという。これはかなしいことだ。
ゲイとノンケの差ではなく、生まれ育ちによるヒガミのような溝。ここに泣いてしまう。
「言えばいいじゃん…バカに付き合ってる暇ないって 自分が割食うのわかっててまでお人好しのふりすることねーだろ たまんねえし…また罪とか何とか言われんの……」


「落っこっちまえおまえなんか」とか「さびしかった……ッ」という台詞を読んで何度も何度も泣く。そして現実世界で謝ることを忘れたりするのだからフィクションはコワい。