大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

〈教授のように、いいかげんな仕事をして辞書に形だけ名を刻むのではなく、俺はどの部署へ行っても、『大渡海』編纂のために全力を尽くそう。名前など残らなくていい。編集部に在籍した痕跡すら消え去って、「西岡さん? そういえば、そんなひともいましたっけ」と馬締に言われるとしても、かまわない〉

舟を編む (光文社文庫) 三浦しをん舟を編む (光文社文庫)』。

西岡は「誠実なのね」と女から賞されたためしがなかった。必要に応じて嘘もつくし、気分に応じて優しさの量を調節する。それが本当の誠実ってもんじゃないのか、と半ば開き直っている。必然的に、どの女とも長続きしない。
結局、まじめみたいなやつが、本当にモテる男なんだよな。一見冴えなさそうで、真面目さだけが取り柄で、でもなんかちょっと愛敬もなきにしもあらずで、仕事や趣味に熱心に打ちこんでるやつ。