大漁、異漁。耀

タイトルは タトゥーのようなもの

「いつか誰かが言ってた 神様はあんまり四郎が可愛いもんだから 四郎の一部をもっていってしまった だから四郎は神様に近いのだと……」

神秘家列伝 其ノ四 (角川文庫)
水木しげる神秘家列伝 其ノ四 (角川文庫)』。あつかわれるのは仙台四郎、天狗小僧寅吉、駿府の安鶴、柳田国男泉鏡花
話の運びが巧い。画も。
青年期の泉鏡花、幼年期の柳田国男がかわいい。同時代の二人だが、怪異への接しかたはちがった。
柳田国男『山の人生』に〈山に埋もれたる人生のあること〉。
〈我々が空想で描いて見る世界よりも、隠れた現実の方が遙かに物深い〉


〈「うそ」と「まぼろし」との境は、決して世人の想像するごとくはっきりしたものでない。自分が考えてもなおあやふやな話でも、なんどとなくこれを人に語り、かつ聴く者が毎(つね)に少しもこれを疑わなかったなら、ついには実験と同じだけの強い印象になって、のちにはかえって話し手自身を動かすまでの力を生ずるものだったらしい。昔の精神錯乱と今日の発狂との著しい相異は、じつは本人に対する周囲の者の態度にある。我々の先祖たちは、むしろ怜悧にしてかつ空想の豊かなる児童が時々変になって、凡人の知らぬ世界を見てきてくれることを望んだのである。すなわちたくさんの神隠しの不可思議を、説かぬ前から信じようとしていたのである〉